漫画の中のロシア武術システマ 補遺 『ツマヌダ格闘街』追加1.5

ステマが登場する漫画の一つとして『ツマヌダ格闘街』(上山道郎少年画報社)について以前紹介したが、掲載雑誌を追いきれずに抜け落ちがあった。
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今回はこれまで紹介しきれなかった部分、「追加」と「追加2」の間のエピソードに登場したシステマの描写について解説したい。

ツマヌダ格闘街』初の本格的なシステマ使い登場

単行本16巻では主人公ミツルの師でありメイドであるドラエのルーツを巡るエピソードでシステマを使って戦う登場人物が現れる。

このエピソードではドラエに関わる重要人物としてドラエの双子の姉・アナスタシア(アーニャ)が登場する。
アーニャのボディガードであるバウワン・アマンガムはシステマ使いだが、当初システマ使いであることやアーニャとの関わりは隠されたまま、試合を行うことになる。
バウワンと戦う新風イリヤ合気道を基本としており、両者は打撃なしの変則ルールで試合を行う。
イリヤ示現流の運足に加え、それまでの試合で見せていなかった柔道の技も駆使して攻撃するが、バウワンにその力を利用されて翻弄される。
下のページはその流れの一つ。バウワンは強引に柔道の投げに行こうとしたイリヤの力みを利用して投げている。



上山道郎(2014)『ツマヌダ格闘街』16巻(少年画報社)より

続いてイリヤは柔道の技をフェイントとして合気道の呼吸投げに強引に持っていこうとするが、逆に投げ飛ばされる。
次のページはその応酬の中で何が行われたかの解説部分である。


上山道郎(2014)『ツマヌダ格闘街』16巻(少年画報社)より

この他にもシステマのリラックスなど解説がある。
この試合のシステマの描写が実際の練習者から見てどうかは文章では説明が難しい。
ステマは状況の細部の変化でやることが変わるため、この状況なら必ずこうなる、という話はなかなかしにくいのだ。
雑誌『Black Belt』2013年11月号の記事に書かれた、システマのヴラディミア・ヴァシリエフ師を取材したライターの経験談が分かりやすい例だ。
そのライターは、取材で最初に見せてもらった防御の技について、撮影のためにもう一度同じ技を見せてくれるようにヴラディミアに頼んだが、できないと言われた。僅かに異なる攻撃、あるいは違う角度からの同じ攻撃でさえ、対応は根本的に異なることがある。「全く同じことを繰り返すとは約束できない」というのがその取材者への説明だった。


この試合はアーニャ登場の騒動により不完全燃焼で終了する。その後、ミツル達は「追加2」のシステマの指導を受けることになる。
また、単行本では「ドラエさんの武術解説補習コーナー」としてシステマについて解説した頁が加わっている。
そこではシステマの来歴や原則、決まった型や構えや技がないことについて簡単に解説されている。
また、他の軍隊格闘技と異なり、呼吸やリラックスにより普段通りの力が発揮できるようにしていることについて次のような説明がある。

「パソコンに例えるなら普通の格闘術は専門的な技能=アプリケーションであるのに対し」
「システマはそれプラスCPUの性能アップやトラブル時のバックアップ機構を含めた技術であるといえます」
「これは日本や中国の古い武術にも通じるコンセプトで それが近年日本で人気が高まっている理由の1つではないかとわたくしは考えています」
上山道郎(2014)『ツマヌダ格闘街』16巻(少年画報社)より

人気、高まっているかな……。
それはともかくイリヤが再戦のためにシステマを学んでいるとの説明があり、システマについても出されていない要素がまだまだある事から、今後もシステマが登場する可能性は極めて高い。再登場することがあればまた説明のエントリを書く予定だ。