タクティカルペン、税関で武器扱いされる

7月1日の朝日新聞朝刊に"ペン、「武器」扱い 税関・輸入差し止め 名古屋・大阪"という記事があった。ネットでは未登録では冒頭しか読めない。


http://www.asahi.com/national/update/0701/NGY201206300053.html
またはhttp://www.asahi.com/national/intro/NGY201206300032.html?id1=2&id2=cabcahab


タクティカルペンが税関で武器として差し止められたという問題の報道である。タクティカルペンについては以前意外と知らない!? 仕事に役立つタクティカルペンの使い方 - 火薬と鋼に書いた。
一種の護身用品を兼ねた耐久性のあるペンである。現状、該当記事のうち、概要と重要な主張を引用してみよう。

米国製の万年筆など筆記用具の一部が名古屋と大阪の両税関で「武器」と判断され、約200点余りが輸入できないまま差し止められている。両税関は材質や形状が特殊で護身具に当たるとし、これに輸入業者や米側メーカーが「不公正な判断」と反発。両者の対立は解けず、空港周辺で保管されたまま1年以上に及ぶものも出ている。



差し止められたのはスミス&ウエッソン社やベンチメイド社、シュレード社などの製品だとされている。
記事で取り上げられた各社の主張は次の通り。
差し止めに対して輸入した刃物販売業者「山秀」の社長は「ボールペンや万年筆で人を殺すことができるのか」と反発し、異議申し立てをしている。
製造メーカーの一つベンチメイド・ナイフ社の社長は朝日新聞の取材に「100カ国以上と取引しているが、武器と分類されたことはない。日本の規制は根拠がなく、ばかげている」と答えている。
名古屋税関の業務部次長の回答は「当該製品は筆記用具でもあり、護身用の武器でもある。両方の性質を有する場合は武器と分類するのが国際的なルールだ」というものだ。


これは結構影響がある問題だ。
まず、この論理が通用するなら現在規制されていない同様のタクティカルペンも輸入差し止めが可能となる。更に護身用品や武道用具も税関の判断で自在に規制可能となってしまう。ペンの殺傷能力はタクティカルペンであっても大したものではなく、いざという時に使えても規制されるようなものではないというのが売りだった。だが、ペン程度の殺傷能力やデザインでも規制されてしまうという事は、武器の性質を持っている他の商品も差し止めできるという理屈になってしまう。
税関の「両方の性質を有する場合」の武器の性質をどう捉えるかが議論のポイントだ。製造・販売する側の主張としては、規制するのは武器としての性質を過大に見ていると言いたいところだろう。最も、タクティカルペンの武器としての性質の低さをあまり強調すると、タクティカルペンと普通のペンでは護身用として差がないという理屈になってしまうが。
このペンの危険性やこれまでの日本や海外での輸出入や販売、所持規制の実態を考えると、輸入差し止めは過剰な規制に思える。しかし日本の行政がこうした判断を覆すというのもなかなか考えにくいことで、今後の規制の広がりの可能性も含めて先行き心配だ。