動画を例にナイフの逆手持ちの意義を書く

ナイフを逆手に持つリバースグリップは、利点が分かりにくいためよく疑問の種としてスレッドが立ち、2chまとめサイトでまとめられている。そういった場合、あまり経験者の書き込みはないようだ。
以前、そろそろ「逆手持ち」について書いておくか - 火薬と鋼というエントリを書いたが、具体例や戦術の話をしていなかったので、分かりにくい部分もあったと思う。そこで、改めて逆手持ちの意義について、今回は分かりやすいように動画を交えて解説してみる。
分かりやすさ重視で応用や深い話は書かないので、経験者向きではない点を理解しておいていただきたい。以前のエントリでも書いたことだが、ここで紹介するのは分かりやすい一側面であり、これ以外にも意義や用法がある点に注意。

刺突

逆手持ちはより近い間合いでの突きに適している。
特に相手がタックル等で組み付いてきた場合など、相手の体勢が低く、体が近い場合には、逆手のほうが突きやすい。
あるいは相手の攻撃を避けて近い間合いで攻撃する。

逆手での突きは腕を伸ばして行うと相手に防がれたり捕まれたりしやすいので、適切な距離や技術が必要である。逆手持ちの際の攻撃の間合いは、素手、それもパンチではなく組み技・投げ技とほとんど変わらない。
それを示した動画を一つ。

この動画はフィリピン武術の軍・警察用スタイルの動画で、相手を倒しての刺突や体をすり合わせるほど近い間合いでの攻撃が見られる。


この他、逆手は順手よりも突く力を入れやすいため、プレートが入っていないボディアーマーを装着した相手のアーマーを貫いたり、アーマーの隙間の急所を突くという用法もある。

斬撃

逆手持ちで斬る動作は、逆手持ちの突きよりと同じかそれ以上近い間合いでの攻防に適している。
一例として、下の動画を紹介する。

デモンストレーションなので実戦と違う分かりやすい体勢での練習になっている。
ここで使っているのはフォールディングナイフで特に斬る動きが多いが、刺す動作が多い流派もある。
逆手はかなり近い間合いで斬ることができる反面、間合いのコントロールは難しくなる。これも相手との位置関係や技法によるが…。

カウンター

以上のような特性から、ナイフの逆手持ちは相手の攻撃に対するカウンターで使うことが多い(絶対そうなるとまでは言えない)。
例としてシステマの動画を紹介する。

前半の0:50あたりまで逆手の例が見られる。
攻撃してきた手や接近した体を小さな動きで攻撃している点に注目。


こうした特性・技法は、相手の攻撃をさばいたり相手の体を制御するアクションに適しており、攻撃に対するカウンター、防御などに向いている。あるいは逆手独自の攻撃範囲・技法を重視する人が用いる。
逆手持ちの技法は、違いはあっても多くのナイフ格闘のスタイルに見られる。なぜ逆手で持つかは状況と術者の好み・習熟といったものが原因になっていることも多いと考えられる。
また、日本でも海外でも、状況次第ではナイフ格闘の使い手ではない犯罪者が逆手に持つ例がある。そういった場合には上で紹介したような技法とは関係なくただ突き立てるだけということになる(これも動画があるが、単純な分真似されると物騒なので紹介はしない)。ナイフを逆手に持つのはプロだとか逆に素人だとか色々な偏見があるが、単に逆手に持つかどうかは技量・経験の程度とは必ずしも関係しない。
逆手持ちとは、攻撃の間合いが近い・相手をコントロールする、あるいは強く突き立てる・突き斬る等といった特性が活かせる状況・技術があって発生するものなのである。