火薬と鋼のホラー映画ベストテン

今年の企画に参加する。
ホラー映画ベストテン - 男の魂に火をつけろ!
自分はホラー映画にあまり恐怖を感じないのだが、嗜好として「自分の世界観が崩壊する」「夢と現実の境が崩れる」といった要素を好む傾向がある。H.P.ラブクラフトを好むのも同じ理由。ホラー映画のチョイスもその辺のニュアンスを重んじるので、単純に映画としての完成度とかストーリーの良さとは必ずしも直結していない。また、その辺の嗜好と全く関係ないものもある。


1位 シャイニング(1980年 スタンリー・キューブリック監督)
2位 遊星からの物体X(1982年 ジョン・カーペンター監督)
3位 マウス・オブ・マッドネス(1994年 ジョン・カーペンター監督)
4位 オーメン(1976年 リチャード・ドナー監督)
5位 吸血鬼ノスフェラトゥ(1922年 フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ監督)
6位 ミスト(2007年 フランク・ダラボン監督)
7位 この子の七つのお祝いに(1982年 増村保造監督)
8位 マタンゴ(1963年 本多猪四郎監督)
9位 ジャージー・デビル・プロジェクト(1998年 ステファン・アヴァロス、ランス・ウィーラー監督)
10位 The Call of Cthulhu (2005年 アンドリュー・レマン監督)


『シャイニング』
この理屈の通じない独特のおかしな映像は強烈に印象に残る。明らかに現実離れしたものが見えるのに、なぜそれが見えるのか、何を意味しているのかよく分からない。これは子どもの頃テレビ放映されたのを見たのだが、今となってはこの映画が地上波で放送されることはないだろう。
遊星からの物体X
人間の理解を超えた生物が自分達に化けているという話の中では屈指の緊迫感を見せてくれる。この映画についてはスパイダーヘッドの知識しかない状態で(何という偏った予備知識)ある日深夜放送で流れたのをたまたま見た。翌日頭から見直すためにレンタル屋に行ったものだ。
『マウス・オブ・マッドネス』
ここでカーペンター作品をもう一本。現実と妄想の境が危うくなる、と言えばやはりこれに尽きる。暗喩、イメージがうまく織り込まれ、空想の世界が現実を侵食する。
オーメン
これも明確な因果関係よりも示唆的なもの、暗喩を重視した怖さで、後のスプラッターと比べるとエグさもさほどではないが、子どもの頃に見て感銘を受けた。
吸血鬼ノスフェラトゥ
この映画の存在は中学生の時に知ってレンタルで見た。無数の鼠と黒死病の広がり、デフォルメのきついオルロック伯爵とその影など、重苦しい映像の雰囲気がすばらしい古典。
『ミスト』
モンスター、人間、置かれた状況、起きる事件、全て積み重なって最後に重く残る。
『この子の七つのお祝いに』
岸田今日子岩下志麻が怖い。小学生の頃見たのだが、凡百のホラー映画より怖かった。そして今なお語り継がれる岩下志麻のセーラー服の衝撃。
マタンゴ
恐怖のキノコ映画。特撮や演出とあいまってかなり戯画的なところのある映画なのだが、配役のうまさとあいまって強烈な印象を残す。
ジャージー・デビル・プロジェクト』
モキュメンタリー映画としてあまり知られておらず、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のパクリのような邦題をつけられているが、映画としてはあっちより上だと思っている。ドキュメンタリーとしてのポイントをうまく押さえつつも逸脱するあのシーンには呆然としたものだ。
The Call of Cthulhu
日本では映画祭以外では劇場未公開。21世紀の映画だというのにモノクロのサイレント映画。しかし数多あるラブクラフト作品の映画化の中でも優れた雰囲気を持つ。どうもラブクラフトの小説というのは映画化されるとどぎついB級ホラーになるのだが、それを避けた上で原作のクドい味をうまく取り込んでいる。しかしこれを原作未読の人が見て面白いと思うかどうか。これは、自分の読書体験が裏づけにあるからこそのランクインだと自覚している。