図書館司書・書店員必見!本や雑誌で戦う技術

図書館司書は本で戦うことができると思われているフシがあるので、そういう技術を紹介することにも一定の意義があると思う。もちろん本や雑誌があれば書店員でもその他の職業の人でも可能だ。本や雑誌を使う格闘技術は映画「ボーン・スプレマシー」や「ボーン・アルティメイタム」に登場しているが、空想のものではない。
今回はフィリピン武術「パナナンダタ」の技法を元に日用品を武器として扱うテクニックを解説したDVD(ESPY-TV社のMartial Arts Video Pananandata 6)から一部を紹介する。


パナナンダタの動画



パナナンダタはフィリピン・ルソン島タガログ語文化圏の武術である。他のフィリピン武術(カリ、エスクリマ、アーニス等)と共通している部分もあるが、独自の技術・武器がある。例えば多くのフィリピン武術で使われるスティックは約65〜75cm程だが、パナナンダタで使われるスティックは約78〜84cmと長い。変わった武器の扱いに関する資料も多く、以前書いた知らないようで知っているようでやはり知らないロープでの戦い方 - 火薬と鋼で紹介したのもパナナンダタの本である。
変わった武器を使う、と言っても本で戦う技術がパナナンダタに普通にあるわけではなく、一種の応用技法である。

本で戦う

本を武器とする場合、二種類の持ち方がある。
一つは親指と他の指で本を挟む持ち方。本は手の延長であり、本の背や小口といった狭い面を武器として使うことができる。角も使おうと思えば使えるが、扱いにくいし、DVDにもそういった映像はない。
・パターン1
相手が右平手打ちをしてきた場合。
右斜め前に足を進め、左手と右手の本でブロック。相手の腕には本の背を当てる。

ブロックしたら間髪入れず、本で喉を突く。攻撃に合わせて左足をこの方向に動かすのがポイント。

・パターン2
パターン1と同じだが、相手が左手で攻撃した場合。
ブロックの向きやステップの方向が変わるが、手順は同じ。

・パターン3
相手が右チョップをしてきた場合。要するにパターン1の攻撃方向が逆になった場合。
左斜め前に動き、左手と右手の本でブロック。

自分の手と相手の腕が攻撃の邪魔になるので、左手で相手の腕を押し下げ、右手の本で喉を突く。

・パターン4
下方に右平手打ちを打ってきた場合。
手順は同じだが、ブロックする腕は完全に上げない。

喉を突くところも同じ。ブロックする際、相手との位置関係でどのように押さえるか変わる点に注意。

・パターン5
下方に右チョップをしてきた場合。
ここではこれまでと違って本をブロックに使わない。下げたままの右腕と持ち上げた左手でブロック。

攻撃は下げたままの右手の本を股間に振り当てる。

・パターン6
ストレートパンチを打ってきた場合。
手順は同じだが、ステップは斜め方向ではなくサイドステップ。右ストレートなら右に。左ストレートなら左に動く。


ここでは紹介しないが、本での攻撃は連続することもある。


次からはもう一つの持ち方の技術。
親指を使わずに他の指と手の平だけで持つ。本は手首のほうにある。これは防御を重視した使い方である。
・パターン7
相手が右平手打ちをしてきた場合。手順はパターン1と同じで、本の表紙でブロックする部分だけが違う。

攻撃も本の側面ではなく表紙で相手の顔を打つ。大したダメージはないが、相手の動きを止め、視界を塞ぐ。

左足で相手のスネを蹴る。蹴ったらそのまま相手の足の甲を踏む。

・パターン8
相手が右チョップをしてきた場合。やはり本の表紙をブロックに使う。


この場合は右足で蹴っている。蹴ったらやはりそのまま足の甲を踏む。

・パターン9
相手が下方の右平手打ちしてきた場合。

これ見て疑問に思ったが、素手でこういう攻撃をしてくる人はどれだけいるだろうか。


・パターン10
相手が下方の右チョップをしてきた場合。

ここでは本で顔を打つのではなく、相手の顎を打ち、そのまま押さえている。

足の甲を踏んだ後、更に本を持った拳で相手の首や頭部を打つ技もある。

・パターン11
相手が右ストレートをしてきた場合。



・パターン12
最後だけ違う技術。蹴りのあと、相手の足と首を画像のように押さえて倒す。

なお、実際の映像ではもっと多くのパターンを見せている。例えば蹴り足の左右が変わることもあるし、一撃で終わらず本、蹴りの攻撃を交互に繰り返すものもある。顔を打ってから蹴るとは限らず、蹴ってから顔を打つパターンもあるし、ほとんど同時のこともある。

雑誌で戦う

雑誌は丸めて使う。側面で叩き、先端で突く。この2パターンの攻撃がある。
なお、DVDではなぜか蹴り技への対処しか紹介されていない。本と被るからだろうか。
・パターン13
右上段回し蹴りをしてきた場合。右斜め前にステップし、右手の雑誌と左手でブロックする。

右手の雑誌で相手の顔をはたく。


・パターン14
パターン13の発展。相手の顔をはたくまでは同じ。


今度は右足で相手の右足を蹴る。

そして相手の顔または首を雑誌で突く。

・パターン14
左回し蹴りをしてきた場合。

ブロックまでは同じ手順。

ここでは顔をはたくのではなく、フックを打つように相手の後頭部に雑誌を当てる。

・パターン15
パターン14の別手順。最後にフックではなく雑誌で喉を突く。

・パターン16
ブロックする際、雑誌を下向きにしてブロック。


そして股間を雑誌で突く。

・パターン17
これも途中までは同じ。雑誌で下から顎を突く。



・パターン18
相手の蹴りを雑誌でブロックするのではなく、下から雑誌を入れる。

そして相手の股間を打つ。



雑誌で叩く際、手首や腕のスナップを効かせても威力には限度がある。攻撃・防御の距離を伸ばすためのものと割り切ったほうがいいだろう。また、突きには結構な威力がある。雑誌の面を相手の視界を防ぐ盾として使う技術も考えられるが、そういった技は本の場合と同じことになる。


ここまで見せてきた技術について、写真だけで動きを理解できる人は限られているのではないかと思う。実行できる人となるともはや素手で十分強い人だ。
また、こういった武器とかけ離れた形状の用品で戦うのはなかなか難しく、傘やモップで戦うほうがよほど楽である。何より図書館司書だと図書館資料を武器にはしたくないだろう。実行する機会もそうそうないだろうし、あまり実用的な記事ではないが、世の中にはこういった技もあるといったことだけ記憶していただければ幸いである。
→おまけなぜ本で戦うか〜システマを例に〜 - 火薬と鋼