図書館と護身防犯用品

図書館と危険については、特に問題利用者論において研究がなされてきた。実務的なレベルの話では次の本がある。

図書館が危ない!―運営編

図書館が危ない!―運営編

  • 作者: 鑓水三千男,中沢孝之,津森康之介
  • 出版社/メーカー: エルアイユー
  • 発売日: 2005/06/01
  • メディア: 単行本
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多くの図書館では職員が力で暴力的な問題利用者に対処するという状況は想定されていない。普通は口頭で対応、それでも問題が継続・悪化するようであれば警備員や場合によっては警察への通報によって対応する。従って図書館界ではそこに至る前の過程を重視している。
しかし、図書館職員がそういった暴力行為を止める、あるいは拘束しなければならない事態というのも稀に発生する。上で紹介した『図書館が危ない! 運営編』でも、問題利用者への対応のために木刀や金属定規を備えた図書館についての言及がある。また、図書館職員が実際に取り押さえた例は文部科学省の「図書館におけるリスクマネージメンントガイドブック−トラブルや災害に備えて−」にも見られる。
今回は、図書館における護身用品、防犯用品について私の経験と知識から書いてみる。

図書館という場の特性を考える

ここでいう「図書館」とは公共図書館だけではなく学校図書館大学図書館なども含めている。
図書館での防犯・護身ということを考える際、やはり図書館固有の事情というのを考えなければならない。
まず考慮するのは、その図書館内のスペースや配置である。
問題が起きるのはカウンターの前が多いと考えられるが、利用者間の揉め事などを考慮すると閲覧スペース、書架付近といった可能性も捨てられない。どのような広さの空間で護身用品・防犯用品を扱わなければならないかを考える必要がある。用品を保管する場所もカウンター内/付近ということで大きさの制限があると考えなければならない。
もう一つは、護身用品を扱う職員、スタッフの問題である。
問題が発生した際に複数人数が動けるかどうか。職員が一人しかいない図書館とそうでない図書館では対策に違いがあって当然で、揃える護身用品の種類や数も変わってくる。複数人数で使わないと効果が低い製品もあるからだ。また、技術・体格・腕力といったものも考慮する必要がある。
最後に、警備・警察との関係がある。
警備員が常駐している館であれば護身用品は時間稼ぎ、防御中心でいい。警察署との距離が近ければ、それと近い認識で何とかなることが多いだろう。逆に警備員もいない、警察署も遠いとなければ、様々な可能性を考慮しなければならない。

護身用品の特性と図書館

各種護身用品の図書館での導入・使用について書いてみよう。
画像つきの商品のリンクは、推奨しているわけではなく、紹介する画像を見せたから出している。

木刀、棒

【国産木刀】白樫 普及型木刀 大刀

【国産木刀】白樫 普及型木刀 大刀

【国産木刀】白樫棒6尺(9分径)

【国産木刀】白樫棒6尺(9分径)

木刀や長短の棒(警棒も含む)といった武器は、安価で入手しやすく、置き場所に困らない。手軽ではあるが適切に使う(相手をうまく取り押さえる)のは難しく、防御に使うのも難しい。また相手につかまれた場合、逆に武器を与えてしまうことになりかねない。とにかく高度な技術が必要で、導入するなら定期的に訓練時間をとることを考えたほうがいいレベルの難しい道具である。下手に使うと(滅多打ちするとか)相手に怪我を負わせかねないという危うさもある。
それと赤樫の木刀や杖、棒は白樫と比べて折れやすい。購入の際は素材に要注意。

さすまた

スタンダードさすまた

スタンダードさすまた

近年防犯用品として知られるようになったものに「さすまた(刺又)」がある。さすまたは江戸時代の捕縛用の道具だが、1996年に西入間署が警察用の道具として現代版のさすまたを考案、その後同様の用具が多くの警察や公共機関に広まった。
相手と距離を取れるし、うまく使えば有効な道具である。しかしあくまで押さえつける道具なので、人数と技術がないと難しい。また、押さえつけるのに適した場があるかどうかも問題で、施設によっては扱いにくいだろう。長さ170〜190cmのさすまたを使うスペースがあるかどうか、相手を押さえつける壁等があるかどうか。
押さえつけなくてもさすまたの先が相手を捕らえるロック式さすまたという物もあるが、ある程度の技術と扱うスペースがいる点は変わらない。導入したら講習会など扱いを覚える機会を設ける必要がある。結構場所をとるので保管場所も考えておく必要がある。
図書館の近隣の組織(自治体施設、学校など)での採用例があれば購入しやすいだろう。

ネットランチャー

網を射出して相手を封じ込める防犯用品。役所で備えているところもある。とにかく腕力を要しない点が最大のメリット。一人で使えるし、置き場所もあまりいらない。その点ではお勧めだが、射出する方向に大きな物があるところではうまく機能しない(網がぶつかって相手にうまくかからない)ことがある。図書館でもこれが使える場所には制限がある。相手の近くに閲覧机、椅子、書架、カウンターなどがあるとうまく使えないことがあると思っておいたほうがいい。図書館内で射程や範囲を検証し、職員に周知することが重要となる。このネットランチャーに限ったことではないが、他の護身用品との併用も考えたほうがいい。

盾、シールド

私が一時期働いたある図書館は警備員がおらず、飲み屋街に近いこともあってかカウンター内に盾が常備してあった。時間稼ぎや防御に徹するのであれば、優れた護身用品と言える。また、盾も他の用品との併用が考えられる。
盾のいい点は防御に優れている点と、扱いようによっては盾の面や側面を使って相手を倒したり押し付けたりして制圧できる点。欠点は防御に優れた大きな盾ほど置き場所をとり、取り回しも悪いこと。そして防御用の道具なので、複数人数がいないと制圧に使うのは難しい。図書館に向いているのは軽量で透明樹脂を使ったものだ。サイズについてはカウンターごしに防ぐかどうかでも変わる。各館の使用方法、保管場所にあわせて検討が必要だ。

スタンガン

電気ショックを与える護身用品。様々なタイプがあるが、図書館で使うならある程度長さのある警棒型が良いと考えられる。威力は申し分ないし、威圧もできる。反面、使う側の心理的なプレッシャーが問題になる。それに、図書館では何年も使わないことが想定されるので、スタンガンのような電子機械はあまり向いていないかもしれない。導入するとしたら開館準備に「スタンガンの点検」を加えなければならないだろう。それ以前に、購入が上に認められるかどうか微妙である。日本の公共機関や学校でスタンガンを導入している例はまずないはずだ。

ブックトラック

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館内にあるもので暴力に対処しなければならない時、椅子、脚立やモップといったものがまず思い浮かぶが、それ以外で効果的なものはブックトラックだ。広い面を向けて複数のブックトラックで囲めば時間稼ぎになるし、そこまでせずともブックトラックを盾に説得することも考えられる。盾として使うためには、車輪にロック機構があるものがいい。
また、ブックトラック複数台で相手に突進するという攻撃的な使用法が考えられるが、余程のことがないとやらないだろう。ただし、ブックトラックを使っても一人で対応するのは難しいし、扱う空間やその館が保持できる台数といった制限はある。何より本来の用途で使っていて資料を載せたままでは色々な意味で扱いにくい(威力は増すが)。

その他

あとは個人的な興味・趣味でいくつか紹介。


・警察用ヌンチャク

打撃だけでなく拘束に使える。扱いこなせればかなり多様なことができる。


・コサック鞭

ステマでも使う短く太さのある鞭。強い痛みを与えてあまり怪我をさせず、しかも防御されにくい。これも使いどころが難しいが。