嘘ニュースのチェック法〜漂流した人のSOSをGoogle Earthで発見したという話を例に〜

昨日、下のような見出しの記事を読んだ。元記事にリンクしたくないのでWeb魚拓にリンクする。


無人島に漂流→7年間遭難した女性、ビーチに巨大なSOSを書く→子供がGoogle Earthで発見→無事救出!凄すぎる!(cache)



太平洋上で無人島に漂流、7年間遭難していた女性がSOSの文字を作り、それをアメリカ・ミネソタ州に住む子供がGoogle Earthで発見して救助されたというのだ。
事実なら確かに凄い話だ。
しかし私は記事の見出しの時点である程度疑いを持っていた。そんな凄い話があったらもっと報道されているのではないか?と。
もちろん海外の報道が日本で報じられるまではタイムラグがあるし、上の記事が日本で初めて紹介したのかもしれない。あるいは過去の話で単に自分が知らなかっただけかもしれない。それにしても7年の漂流という信じがたい要素と合わせて考えると、創作の可能性を考えずにはいられなかった。


本文を読んで疑いは尚更強くなった。
発見の元になったGoogle Earthの画像は断片的だし、それを見つけたという少年の情報も乏しい。そもそも遭難した女性の主観による回想になっている体裁もおかしいと思った。奇妙な体験をした人間の主観による語りというのは、都市伝説にありがちなスタイルなのである。それに回想が記事になっているということは発見から時間が経過しているはずで、それまでに報道や少年の情報が出ていたはずではないだろうか。


そんな疑念があってGoogleで「Google Earth SOS hoax」と入れて検索してみた。
この種の話題は先に海外で検証され、ウソであることが明らかになっていることが多いからだ。
検索するとデマや都市伝説の検証サイトの記事が簡単にみつかった。



FACT CHECK: Google Earth Discovers Man Trapped on Desert Island for 9 Years?
HOAX - 'Google Earth Finds SOS From Woman Stranded on Deserted Island' - Hoax-Slayer



簡単に解説すると、まず、ニュースの大元であるNewsHoundが以前から嘘ニュースを報じたことで知られているところである。
そしてこの画像のSOSの文字は2010年、キルギスタンウズベク系とキルギス系の民族紛争(wikipedia:2010年キルギス騒乱)の際に書かれたものだ確認がとれている。占領されたオシ市では市民が各所にSOSの文字を作った。その報道の画像の一つをトリミングしたものが嘘記事で使われたものだ。トリミングしなければ周囲の建物で無人島ではないことが明らかだから加工したのだろう。
また、遭難中の体験談は冒険家のエド・スタフォードの記事の剽窃であることも明らかにされている。
複数の素材を使った嘘だったというわけだ。


この種の記事は、確認すれば嘘だと分かるが、まず確認しようと思うかどうかがハードルになる。 私の場合は「嘘だと疑ったら本当だった」という失敗も多く、必ずしも参考にならないが、良くも悪くも人の感情を揺さぶる話は疑うことが多い。