武術と天狗と猫『天狗芸術論・猫の妙術』

天狗芸術論・猫の妙術 全訳注 (講談社学術文庫)

天狗芸術論・猫の妙術 全訳注 (講談社学術文庫)

『天狗芸術論』『猫の妙術』は、どちらも剣術の理念、精神面について物語の中の談話に仮託して説いたもので、老荘思想や仏教思想など当時の思想的背景が伺える本。
発売されてすぐに読んだのだが、昨日話題にしたことだし改めて書いておく。
『天狗芸術論』も『猫の妙術』は長らく一部の人にしか知られておらず、手軽に入手できるものではなかったのだが、今年2月に講談社学術文庫から出版された。これまで武術書などで『猫の妙術』のほうが言及されることが多く、有名だ。漫画の『銃夢Last Order』でも言及されているから、そちらで知った人もいるかもしれない。
同書で説かれている内容は、剣術の精神面について書かれた本を読んだことがある人なら既知の事柄が多いと思う。『猫の妙術』で『荘子』の「木鶏」の話があるように、あの辺の理想像のイメージは大体似通ったものになる。
鼠が強くて並の猫で対処できないとか他所の猫を借りるとかいったストーリーは、実話として江戸時代の随筆で語られる逸話と近いので、実際そのようなことがあったのだろうと思う。
この本、江戸時代の剣術…というより剣術修行者の理想的な精神のあり方につい知りたい場合に一度は読んでおいたほうが良い本。