ロシア武術・カドチニコフ・システマ

公式サイト(英語) http://kadochnikovsystem.com
今回はカドチニコフ・システマを紹介する。
今まで紹介したものと比べて軍隊向けの格闘技としてより広まっている格闘技だ。
ロシア語で言えばСистема Кадочникова(システマ・カドチニコヴァ)で、英語で言えばKadochnikov Systemであり、カドチニコフ・システマという呼び方は英語圏の一部や日本の呼び方だが、分かりやすいのでここではこう表記している。
カドチニコフ・システマは1962年から始まったとされている。
A.A.カドチニコフの仕事はクラスノダール軍学校で機械工学を教えることだったが、それよりずっと以前には軍の航空学校で各種のロシアの伝統武術やサンボの創始者の一人スピリドノフの格闘技を学んでいた。後にカドチニコフ・システマの基礎になったのはスピリドノフの格闘技だとされている。
カドチニコフは格闘技経験を踏まえて全く新しい科学に基づいた格闘技を研究・開発した。カドチニコフが参考にしたのはソ連の有名な運動科学者ニコライ・ベルンシュテイン(wikipedia:ニコライ・ベルンシュテイン)らの研究だという。カドチニコフは数学、解剖学、物理学、バイオメカニクスといった科学とソ連の戦争の歴史を基に格闘技とサバイバル術の研究・指導を行い、空手やサンボといった既存の格闘技との比較検討も行って体系を作り上げた。
カドチニコフやその弟子は、クラスノダール軍学校を離れた後に民間航空の搭乗員、アフガニスタンチェチェン等に派遣される特殊部隊、国境警備隊、軍愛国団体に所属する児童などソ連-ロシアと東欧の各地で幅広く指導を行ったという。
カドチニコフ・システマは、型がなく、科学的理論と人体構造に基づいた動きを基礎としている。また力による抵抗をせず、脱力を重視している。しばしば図式を用いた解説が行われる点も特筆すべき点だ。また、ナイフ、シャベル、棒などの多様な武器への応用、塹壕戦や地上での移動・姿勢変更のための体術が含まれている。オリエンテーリングなどのサバイバル技術の指導も行っている。
カドチニコフ・システマでは習得する技術が段位(レベル)に応じて決められており、試験を経て次の段階に進むようになっていて、カリキュラムがしっかり定められている。レベル6ではスラブの伝統舞踊も試験に含まれていて、民族色がある。
各レベルの試験内容 Tests | Systema
なお、名称にシステマとついているロシアの格闘技は複数あるが、つながりがないものとあるもの、様々である。日本でシステマと言えばリャブコ・システマだが、両者は方法論や理念から異なっている。練習者には複数のシステマを学んだ人間もいる。また、各種システマで参考にした武術や軍のトレーニングが共通している場合も考えられ、技術のつながりは複雑に入り組んでいる。


全般を紹介した動画。


図式を用いた指導の一例。アルキメデスのらせんに基づいた技術。