漫画の中のロシア武術システマ 番外『ジュウドウズ』

今週(2014年11月17日)発売の週刊少年ジャンプ掲載の漫画『ジュウドウズ』にシステマについての言及があったので紹介してみる。
近藤信輔『ジュウドウズ』は今年9月から連載が始まった漫画で、主人公は柔道とは別の古い柔を使う柳華(やなぎ・はな)。
華が住む八破羅(やはら)村では古くから独特の柔道が伝えられており、一定の時期、腕自慢が夜間に互いに戦って相手の札を奪い合う柔道頭(じゅうどうず)という祭りが開かれているという設定になっている。なお、この古い柔道と祭は400年の歴史があるとされているが*1柔術ではなく柔道と呼ばれている。
ステマへの言及があるのは、その戦いの中、王屋道場一門が100人がかりで華に襲いかかる場面である。
華に教えた経験がある医師・静は多対一の戦い方についてこう語る。

「やり方はガキの頃に教えたよな…華」
「ただすべてを動かし続けろ。足も 手も 眼も 脳も 肺も」
「そして 笑え」

「動き回れ!! 周囲を把握しろ!! そして休まず戦略を組み続けろ!!」と、静の教えを体現するかのように華は戦う。
そこで多人数相手に一人を投げた動きを次の相手の技につなげる一連の動き見て、華を追っている記者・齊藤がシステマに言及する(左下のコマ)。


↑華の多対一の戦いと↓それを見て驚く人々。

週刊少年ジャンプ集英社)2014年51号掲載『ジュウドウズ』第11話「笑え」より

そのコマにある2体1のモデルはこの柔道の戦いではなく、システマの戦いのモデルだろう。
印刷の問題もあって細かい部分は潰れているが、一人を打った打撃の動きを次の相手を打つ動きにつなげているように見える。
ここでシステマは多人数戦闘の戦い方の例として挙げられているわけである。上に引用した画像では潰れて見にくいが、コマ間の隙間に書かれた注にはシステマについて「ロシアの軍隊格闘術」と簡単に書かれている。
しかしシステマ知名度を考えると、多対一の格闘技術の例として読者に分かりやすくはないかもしれない。


さて、こうした華の戦い方と笑みを浮かべる表情を見た静は、次のように心の内で語りかける。

「よし…そうだ笑え華」
「多人数を相手にするならば僅かな心の緊張が判断を鈍らせる」
「リラックスしろ…笑えるほどに」
「そして思考と視野を保て」

こうした語りや実際の格闘描写にはシステマに通じる要素少しも全く違う要素も含まれているが、特に言及はされていない。
ストーリー上も戦い方の説明としても、システマについて詳細に記述する必要はないので当然だ。
ともかく少年誌で最もメジャーなジャンプ掲載の漫画でシステマが説明に使われた例として記録しておく。

*1:作中では、創始者の田中柔蔵が大阪夏の陣天王寺・岡山の戦い後の徳川軍一万五千(家康含む)を全て投げ倒したという史料がある。伝奇物より凄い。