一般人の多くは過去の武器を重く見積もりがちなのか?

Twitterでみんみんぜみさん([twitter:@inuchochin])が紹介していたまとめサイトの奇妙な記事とコメントについて。


(全部引用するのもどうかと思ったので一部だけの引用)

ここで引用しなかったものも含めてくだんのまとめサイトの内容には色々とつっこみどころがあるが、気になったのは重さについての誤解・間違いだ。


以前、西洋甲冑の話で重さ・バランスの誤解について言及した。

西洋の甲冑(特にプレートアーマー)が鈍重で装着している人間が倒れたら起き上がれないという誤解は海外でも結構あるらしく、それに対応したデモだろう。
西洋甲冑を着けた状態で落馬するとどうなるか - 火薬と鋼より

そして調べてみると、どうも甲冑だけでなく、剣の重さについて同様の誤解が欧米でもあるらしい。
例えば次の記事によると、中世やルネサンス期の刀剣の重さについて、実際の重さ以上のイメージを持っている一般人や研究家がかなりいるという。

What Did Historical Swords Weigh?
(グレートソードについては別記事The Two-Handed Great Sword

これによると、10世紀から15世紀の剣の重さは平均1.3kg、16世紀の平均は0.9kgである。それより重いバスタードソードでも1.6kgを越えない。他の例は割愛するが、ともかく刀剣に実際触れたことがない多くの人々が考えている重さはこうした当時の剣の数値をはるかに上回っている。
例えば、この記事で紹介されているヒストリー・チャンネルの番組の中世軍事技術の専門家は、14世紀の剣は重く、時に40ポンド(18.1kg)にもなると解説したという。だがそれは儀礼用の重い剣でもありえない重さだ*1
上の記事ではこの種の誤解の例と実際の剣の重さやバランスについて解説している。実際に中世・ルネサンス時代に使われた剣はそれほど重くはなく、バランスに優れている。なお、バランスの問題から、現代の復刻刀剣はオリジナルの刀剣よりも重く感じるという興味深い指摘もある。
紹介されている誤解の例を見ると、実際の重さの数倍〜10倍の重さだと思っている人は珍しくないようだ(20ポンド=9kgとしている例が複数みられる)。これは当時の剣の3ポンド(1.36kg)程度の重さとは大きく違う。中世史の研究者は武術の経験があるわけではないため重さや使用法についてとんでもない間違いを書いていることが多くある。
他の武器・防具に関しても手に取る機会がない多くの人々に同様の誤解があるかもしれない。日本でも日本刀・西洋剣に関わらずかつての歴史上の武器・防具を(バランスも含めて)実態より重いものだと思っている人はかなりいそうである。そうした誤解は戦い方や武術に関する誤解にもつながる。

*1:オンスとポンドを間違えた可能性は考えられる。40オンスなら1.13kgで剣の重さとして無理はない。