『太極拳パワー』の中のシステマの記述

『全ての流派に通じる、現代の太極拳バイブル 太極拳パワー 「ARCプロセス」で、内部エネルギーを足から手へ!』の著者のスコット・メレディス師は太極拳形意拳に関する著作のほか、システマのインストラクターとしても知られている。システマの本『秘伝・ロシア式呼吸法の達人たち (Let Every Breath...Secrets of the Russian Breath Masters)』の著者の一人でもある。
太極拳パワー』はタイトル通り太極拳に関する本だが、他の武術に言及した箇所もあり、システマについても触れている。
しかしどの部分だったか読んだのがかなり前だったせいかすっかり忘れていた(そもそもどの本に載っていたのかを忘れていたわけだが)。
最近読み返して確認する機会があったので、今後のために引用しておこうと思う。
該当箇所は「第5章 格闘術としての太極拳」にある。

推手は本質的に格闘術を発達させるシステムではないと断言しているが、闘争に効果的な破壊力に迫る力を発達させることができる。実際に太極拳の推手の特質を99パーセント使ってロシア武術システマの力強い関節技に見られるような実際の闘争場面で使えるスキルを発達させる武術家もいる。彼らは即座に推手から現実の闘争モードへ移行することができるのだ(ロシア武術システマの力強い関節技については、ロシアの武術家であるウラジーミル・ワシーリエフ氏のDVDを参照)。ウラジーミル・ワシーリエフ氏が示す力強い関節技は、真の闘争用推手である。相手の関節を掴み、ギブアップを待つことなく瞬時に破壊してしまう。推手は自己防衛には不適切であると言い放ったものの、ある人にとっては、実際の闘争に使えるスキルに成り得るのだ。ただ、そのスキルを練習するのは簡単ではない。
(スコット・メレディス著『太極拳パワー : 全ての流派に通じる、現代の太極拳バイブル : 「ARCプロセス」で、内部エネルギーを足から手へ! 』(BABジャパン、2013)238ページ)

ここでいう「力強い関節技」はdynamic joint breaksのことである。

ステマ太極拳をどちらも練習している(あるいはしていた)人は多く、両者を並べて書かれた文章もWebに数多くある。だが、ほとんど海外で書かれたものだ。
一方、日本ではシステマ合気道の類似・相違について説明している例はあるが、太極拳と比較をしている例は少ないようだ。特に漫画で使われている説明だとこの傾向が強く、太極拳への言及さえない。この差は練習者の興味や人口、雑誌での紹介のされ方の違いによるものだろうか。