西洋剣術の二刀流についてインストラクター達が語る

先日、中世ヨーロッパの剣術の二刀流についての動画を見た。
西洋剣術のインストラクター達が実際の二刀流の技術についてデモンストレーションを交えつつ解説しているものだ。
ここで言う二刀流は、両手にそれぞれ武器(主に剣)を持つ西洋剣術の技法のことで、刀に限定した話ではない。
宮本武蔵への言及もあり、長短二つの武器を使うことに文化圏を越えた必然的な理があることが語られている。
この部分でヘヴィファイトで二刀流を実践しているバケツさん([twitter:@Baketu_head])を連想した。


話は少し変わるが、日本でもしばしば二刀流の有効性は話題になる。まとめサイトなどを見ると二刀流の意義を認めない内容が多く見られる。しかしそこで語られている内容は現実の二刀の用法とは違った想像や伝聞が目立つ。このため武術経験者や研究家がこうした言説への対抗もあって実際の二刀流について解説していることがある。
例:実際の二刀流の例を演武の動画や伝書などから紹介したまとめ
二刀流の話題:実際の二刀流剣術 - Togetter
続・二刀流の話題:日本の片手剣って本当に珍しかったのか?剣術の生まれた背景は? - Togetter
Togetterには他にも二刀流についてのまとめが複数あるのだが、割と話が拡散しがちなので、ここでは紹介しない。興味がある人は検索してほしい。


海外でも西洋剣術の二刀流についての議論はあるようで、やはり実際の剣術の知識・経験がない人が想像やゲームの知識を基に語るといったことがあるようだ。
今回紹介する動画もそうした背景がある。
解説しているのは歴史的ヨーロッパ武術(Historical European martial arts ;HEMA)の一団体の創始者・インストラクターのRichard MarsdenとLee Smith。
色々と興味深い内容だったので、発言を翻訳して紹介しよう。
かなり雑な訳なので、英語がある程度分かる人はふつうに動画だけ見たほうが分かると思う(訳には後でこっそり手を入れるかもしれない)。


Richard: 二刀流は存在した。頻繁にあったとは思わないが、二刀流に関する文献は豊富にある。二つの剣を持つ技術をどのくらい見たことがあるか?
Lee: 多くはない。
Richard: 剣とダガーを使ういい技がある。このように彼が構える(Leeにレイピアとダガーを構えさせる)。彼のダガーは多方向に動かせるが、剣ともつれさせない。
Lee: ところで、HEMAと関わりのない話になるが、宮本武蔵は短い武器と長い武器を持って同じことをしている。
Richard: 彼は刀を両手持ちすることを好まなかった。
Lee: そう、彼は二つの武器を使った。短い武器と長い武器だ。これは偶然ではありえない、文化を越えたものだ。
Richard: それでは構える。このダガーは問題ない限りどこにでも向く。
(レイピアとダガーの二刀流とレイピアのみを使う相手とのデモンストレーション)
Richard: そして彼が両手に二剣を持つ際、二つの剣に問題が生じる。特に二つの剣が長いと、剣がもつれあう。
Richard: 彼がダガーを持っていたら、私は両方を制することはできなかった。今はできる(ロングソードの一振りで二つのレイピアを一緒に払ってみせる)。
Richard: そのため多くの人がこうやってきた(Leeにレイピア二本を構えさせる)。彼らは一つの剣を前に、一つの剣を後ろにして戦った。(前方のレイピアに触って)ここであなたは一つの剣で戦うが、(後方のレイピアを指して)あの剣は遠く離れている。
Lee: このようになる。
Richard: ああ、それは違う。彼がそこに掲げて何もしてないのなら、彼は結局一つの剣で戦っている。そして彼は進んで他の敵と戦う。それではあなたはなぜ二つの武器で戦うのか。あなたは二つの剣を本当に一緒には使っていない。
Lee: その通りだ。
Lee: もし彼がきたら(右のレイピアで相手のロングソードを受け流して左のレイピアで突く) あるいは斬りに来たら(左のレイピアで相手のロングソードを受けて右のレイピアで突く)
Richard: そして二つの剣は別々だ。あなたはこのようにはしない(二本の剣を前に突き出して振るジェスチャー


Richard: 忘れてはいけない。剣はほとんどの時間何もせずに鞘に収まっている。貴方が技を見る際、ほとんどの人は剣を自分自身で運んできているだろう。
Lee: 剣が高価だということもある。
Skall: ああ、一つの剣でも十分高い。
Richard: 私が考えるに二つの剣を持って街を歩き回るのは実に異様に見える。ほとんどのレイピアの教則では(二本使う技法は)見られない。Capo Ferro (中世イタリアでレイピアの教則本を書いた人物)が2つのレイピアを教えたとは思わない。
Lee: 彼はロテラ(盾の一種)を教えた。
Richard: ああ、彼は数多くの素晴らしい資料を示している。しかし巨人(Capo Ferro)は二刀流は教えていない。
Lee: また、あなたはこれ(ダガー)をユーティリティ・ナイフとしても使うことができる。これでものを切ることができる。
Skall: ユーティリティ・ソードは…そんなに使えない。


Skall: 試合で二つの剣で戦っている二人の騎士が描かれている絵がある(画像)。しかしこれは物珍しさのためのように見える。
Lee: あるいは彼らは見せびらかしている。
Richard: しかし私はそれが一般的だったとは思わない。市民の武器として、ほとんどの人は二丁のAK-47を肩に下げて携行しない。
Skall: 私が特に愚かだと思うのは交差させての防御だ。
(Leeが実際に2本のレイピアを交差させてSkallが振り下ろすロングソードを受けてみせる)
Lee: これはない。
Skall: ありがとう。私はあなたの二つの剣を制することができる。(Leeのレイピアを押し下げて突く)
Richard: もっとはっきり確認したいか?
Richard: 巨人(Capo Ferro)の2番目の本に「重い剣を持った相手と戦わなければならない時何をしなければならないか」が書かれている。彼は重い剣が何かは書かなかった。(Skallのロングソードを指して)あれはより重い剣だ。(レイピアとダガーを構えて)そして彼はこう示した。ダガーを上に乗せる。(Skallが先と同じように上からロングソードで押そうとする)
Skall: 余計に力が要る。
Richard: このままでおく(左手のダガーで相手の剣を防いだまま右手のレイピアを下げる)。これがダガーを上にした理由だ。これで私は望むままに攻撃できる。巨人の2番目の本ではこの選択肢として脚を切ることが書かれている。
Richard: 下がってもう一度同じことをやる。毎回相手は大きく切りつけてくる(レイピアの上にダガーを乗せて受ける)。そして私は剣を下げる。これは私が何度か見たものの一つだ。特にあなたが剣を止めるのに両手を必要とする場合。
Skall: 彼らはまた交差斬りもする(2つの剣を交差させて外側に切る動き)
Lee: ああ、それは…
Skall: あれをどう考えるか。
Lee: あいにく私は歴史上の技の挟み斬りについて考えられない。
Richard: 私はこれについての文献を持ち合わせていない。
Lee: 私が切りつけて彼がこの愚かな交差受けをすると…(ダガーで相手の腹を突く)よし。
Richard: Capo Ferroは特に重い剣に対して交差させることを教えている。両手はより強い。これは奇妙に感じる。私はこうしない。
Lee: もし彼が切りつけてきたら、私は一つの剣で制しようとする(Richardのサーベルをレイピアで受け流す)。一旦私がこの線を越えたら、ダガーで突く(間合いを詰めてダガーで突く)。(今度は相手のサーベルをダガーで受けてレイピアで突く)私が本当にやりたいのは主にこれだ。
Skall: これは実に理にかなっている。カウンターと同時に受け流す。
Richard: これらは同時に起きる。それと違う間違ったやり方を見せよう。間違ったやり方だが、よく見える。(デモンストレーションしながら)彼はダガーで受け流しをしようとする。その時彼は剣で何かしようとしない。それから彼は突く。それを私は受け流す…など。これはちゃんとしているように見える。
Lee: これは時間の無駄だ。
Richard: このように動くとは思えない。想定されるのはこれらが同時に起きることだ。彼は受け流しと突きを同時に行う。前後することはない。それは起きるか? 確かに。それは想定されるか? いいや。彼は一度でそれを実行すると想定される。レイピアにおいて、レイピアとダガーを同時に使うことはワンテンポの動作であるとはっきりしている。
私は「招待」と呼ぶ技を作った。我々は彼が知的ではないと仮定しよう。(左右の腕を広げて待ち構える)彼は私の胸を突こうとする。(一旦突かれて見せて)グッドジョブ。
(今度は相手の突きをダガーで押さえて同時にレイピアで突く)
Richard: 私は腕を交差した。これがレイピアとダガーで使うであろう方法だ。2度のシステムではない。他のどのシステムでもそれはない。