昨年、ロシア武術システマが登場するネット小説を片っ端から読んで調べてみた。
システマが登場するネット小説102作品を調べてみた - 火薬と鋼
システマが登場するネット小説158作品を調べてみた - 火薬と鋼
その後、調査方法を変えることでより多くのシステマ登場作品を調査できるようになった。
現在確認できた複数のネット小説投稿サイトでは、258作品にシステマが登場している。
大幅に数が増えたので、改めて調べた結果と全部読んだ雑感を書いておく。
まず、システマ使いの属性についてざっとした情報をまとめると次のような感じになる。
ネット小説のシステマ使いは
- 6割男性
- 半分近くが主人公
- 6割以上日本人
- 半分近くが他の武術も学んでいる
以上のような傾向がある。具体的な数は最後にまとめた。
もう少し詳しく使い手のイメージについて書いてみよう。
- システマ使いは軍人または軍人のイメージに近い強さの持ち主
ネット小説のシステマ使いは軍人・元軍人、あるいは軍人のように強い殺し屋や工作員といったキャラクターが多い。
年齢はかなり若く、10代のキャラクターもかなりいる。10代で特殊部隊隊員になり現在は高校生みたいな例もある。
能力や経歴で言えば『スプリガン』の御神苗優、『フルメタル・パニック!』の相良宗介あたりをイメージしてもらうと近いキャラが多い。ただし性格は様々だ。
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- 多数の格闘技を習得した人物
多数の格闘技を習得した人物でシステマも経験しているという例もある。
この場合、格闘技は列挙されているだけで実際の戦闘描写に具体的に反映されている事は少ない。
また、しばしばマイナーな格闘技、普通には習えない格闘技の経験がある。
なぜそうした多様な経験を積んだかといった理由付けもないことがあるし、戦い方も含めて漠然としているだけで終わってしまう話も多い。人気作はその辺うまく扱っているか、あるいは作品の見せ場が格闘ではない。
恐らく数多くの格闘技経験を羅列する設定は扱いが難しいのだろう。
- システマを中心に使う民間人
他にシステマだけ、またはシステマを含む少数の格闘技経験だけがある人物の例がある。
こうしたシステマ使いが登場する話ではシステマの描写や説明は多くなりやすい。「リアルではないが面白いシステマ描写」もある。
システマの指導・練習の場面があるのもこのパターンが多い。
他のパターンでは指導者・練習環境や経験が全く分からない話も珍しくない。
以上の3つの類型は複合していることもある。
いずれにしても、現在のネット小説のシステマはしばしば「軍隊格闘術」「軍隊格闘技」といった軍との関わりを強調した呼称で説明されている。
ネット小説のシステマの説明はしばしば現実のシステマの情報(中には実際に体験した人もいる)を基にしているが、作中のシステマの個性、強さのイメージは他の軍隊格闘技とほとんど同じである。
そのほうが小説の設定として扱いやすいのかもしれないし、情報源や先入観のためそうなっているのかもしれない。
現状のネット小説のシステマは強さをアピールできるものとして使われているが、あえてシステマでなければならない話は少ないと言える。
現実のシステマのフィクション向きのおいしい部分はまだまだ未開拓なのではないだろうか。
集計
作品数 | |
対象作品数 | うち言及のみ |
---|---|
258作品 | 76作品 |
確認したネット小説投稿サイトでシステマが登場する小説は258作品あった。
(評論・エッセイ・あとがきのみに登場する作品は除外した)。
このうち登場人物がシステマを使う小説は182作品、例や説明のみに登場する小説は76作品あった。
システマが登場するネット小説のうち、言及のみのものも含めて書籍化作品は以下の4タイトルである。
『異世界支配のスキルテイカー』、『終天の異世界と拳撃の騎士』、『竜の専属紅茶師』、『ひとりぼっちの異世界攻略 〜チートスキルは売り切れだった』
システマ使いの属性 | |
使い手の性別 | 男110/女64/混合他8 |
---|---|
主人公である | 89作品 |
スペツナズである | 9作品 |
他の武術も習得 | 86作品 |
一作品で複数の男女が使う作品や性別が不明の作品を「複数他」とした。
スペツナズの集計には元スペツナズ隊員も含めている。
システマ使いの年齢は10代が多い。
しかし10代でも軍人・元軍人だったり個人的・組織的に軍・軍人とつながりがある例は多い。入り組んだ経歴も多く、多様で集計しにくい。
システマ使いの出身地
ネット小説のシステマ使いのほとんどは日本出身である(117件)。これにはロシア滞在経験者、ロシア系日本人なども含まれる。
日本の次に多いのはロシア出身者で23件。
他の習得武術 | 件数 |
---|---|
空手 | 33 |
柔道 | 29 |
軍隊格闘技 | 28 |
中国武術 | 26 |
合気道 | 23 |
ムエタイ | 16 |
剣道 | 12 |
ボクシング | 13 |
カポエイラ | 11 |
テコンドー | 11 |
少林寺拳法 | 7 |
件数は作品数を数えた。
一作品に複数の軍隊格闘技・中国武術が登場する作品もあるので、延べ数でカウントすると軍隊格闘技が1位、中国武術が2位となる。
軍隊格闘技の内訳を見ると最多はクラヴ・マガの17件である。コマンドサンボ7件も軍隊格闘技に分類した。
中国武術の内訳を見ると最多は八極拳の8件、次に多いのはジークンドーの7件である。
この表に記載していない武術が数多くあるが長くなりすぎるため出力していない。