漫画の中のロシア武術システマ 第6回『ベアゲルター』

今回紹介するのは沙村広明による『ベアゲルター』だ。
2011年から月刊少年シリウスの別冊アンソロジー『ネメシス』で連載が始まり、現在は『月刊少年シリウス』に移籍した。
この漫画にシステマが登場することはかなり前に教わったのだが、紹介するのを忘れていた。

『ベアゲルター』とは

簡単に説明しにくいが、日本の売春島・石婚島(いしくなぎ)を発端に3人の女性、ヤクザ組織等の思惑や利害がぶつかりあう複雑かつ派手なアクション漫画だ。アクションは現実の格闘技の動きをうまく参考に描かれており、さらに銃器、武器、様々な身の回りの品も使い、一筋縄ではいかない。

不二叡祐とシステマ

作中でシステマを使うのは脇役の不二叡祐(ふじ・えいすけ)というキャラクターだ。
3巻になって初めて登場した人物で、関西慈悲心会若頭補佐という肩書のヤクザである。
髪がなく、顔は傷跡だらけの巨漢の中年で見るからにヤクザといった外見をしている。
当初、彼は銃器を使うだけで格闘技術はないと考えられていた、
しかし、白兵戦になって突如その戦闘技術を発揮する。

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この戦闘後、不二はソ連解体後の銃器の売人(亡命させて組員にした)から教わったと語っている。
ここでは「脱力して絡め捕る護身術」と説明されているが、別に組技しか使わないわけではなく、この後のストーリーでは拳も使っている。
呼吸を入れている点がシステマらしい描写となっている。普通の格闘技とは違った動きであることが伺えるようになっている一方、この後の格闘では打撃も含めて力勝負になっていてその点はあまりシステマらしくはない。
なお、3巻のあとがきには作者がシステマのDVDを購入して見たことが書かれている。
細かいことを言うと、システマはロシアの組織犯罪対策、銃器密売取り締まりの特殊部隊と関わっているので、それを銃器の売人が教えるというのは結構無茶な話ではあるが、それはフィクションのシステマではよくあることだ。