pixiv小説に登場するシステマが急増した理由とは

何度か紹介してきたように、私がロシアの格闘技・システマのインストラクターをやっているということから、個人的興味でシステマのフィクションでの扱いを調べている。中でも数が多いのはネット小説だ。
今回はそのうちpixivに投稿された作品の話について書いてみよう。

実は過去に投稿したネット小説のシステマの動向では、これまでpixivを含めていなかった。pixivはアニメや漫画、ゲーム、ライトノベル等を元にした二次創作が多いという点はハーメルンと同じだが、pixivの小説やタグには独特の用語が多く、説明が省かれていることもあって、内容を把握するのが大変だったからだ。
時間をかけて調べてみると他の小説投稿サイトとは全く異なる様相が見えてきた。

ステマ登場作品数が多い

現在pixivの小説でシステマが登場する作品は111作品ある(シリーズものや連作は1作品としてカウントしている)。
これはかなり多いほうで、日本最大の小説投稿サイト・小説家になろうのシステマ登場作品は現在181作品、二次創作小説大手のハーメルンで現在99作品だ(削除・非公開になった作品を除外した数)。
それ以外のサイトと比較しても多く、pixivは現在日本で2番目に多くのシステマ登場小説を読めるサイトなのである。
個別に紹介はしないが、pixivのシステマ登場作品のシステマ描写や説明はシステマ経験者から見ても的確なものから、現実のシステマとは全く別物になっているものまで様々な例がある。

ステマ登場作品が増えたのは最近

ステマ登場作品の年ごとの数を見てみよう

2012年―5作品
2013年―5作品
2014年―5作品
2015年―9作品
2016年―8作品
2017年―17作品
2018年―38作品
2019年―24作品

この2019年の作品数は6月上旬までに公開された数であり、今後さらに増えるだろう。(※2020年に確認した結果2019年-40作品だった)
このようにpixivで近年システマを登場させる小説が増えていることがわかる。

ステマが増えた理由

実はこの増えたシステマ登場作品のうちかなりの割合は『名探偵コナン』の二次創作小説である。それも全て女性向けと見られる小説だ。
これは最近の『コナン』に登場したキャラクター、安室透やそのライバルの赤井秀一の人気によるところが大きいと考えられる。内容を確認するとシステマが登場するコナン二次創作小説の初出は2016年で、その後急増している。
安室透の人気については以下のような記事になるほどで、漫画読者やアニメ視聴者にはよく知られている。
www.oricon.co.jp
別に漫画やアニメでこのキャラクターがシステマを使うというわけではない(安室透の格闘技術はボクシング、赤井秀一ジークンドー)。
しかし潜入捜査官やその周辺人物、あるいは敵役が習得している格闘技としてシステマがふさわしいという知識が広がったために名探偵コナンの二次創作小説でのシステマ登場数が増えたようだ。
要するに人気キャラに格闘スキルを付け加えているのではなく、人気キャラの周辺のキャラ(原作に登場しない二次創作独自のキャラを含む)の格闘スキルを考案した結果システマの登場が増えているのである。
情報の広がりについては、二次創作の人気作品から広まったと考えるのが妥当だろう。システマが登場する作品にはブックマーク数7000users以上になっているものさえある。
コナンの影響かどうかは不明だが、他の女性向けの二次創作小説でシステマが登場する例も近年増えており、刀剣乱舞ユーリ!!! on ICEBANANAFISHなどの二次創作にも登場している。
今年前半(2019年)も女性向けのシステマ登場作品数は多く、しばらくこの傾向は続くと思われる。