システマのプッシュアップ(腕立て伏せ)ができない人のための練習

先日公開した次の動画に関連して、もっと初歩的な話を書いてみる。
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ステマの重要な基礎エクササイズの一つにプッシュアップ(腕立て伏せ)がある。
一般的な自重筋トレとしてのプッシュアップというよりシステマで重要な身体の使い方、呼吸法、心身の状態を練習している意味合いが強く、様々な派生バリエーションが存在する。
とは言え体重に比べて筋力がないとプッシュアップ自体できないので、段階的な練習が必要な人もいる。
必要なのは筋力だけでなく呼吸を含めた身体全体の使い方を身につける練習だ。
私がシステマを始めた時は、練習経験なしで50回のプッシュアップができたので回数の問題で困ったことは無いが、システマで求められる要素に気付くまで時間がかかった。

ステマのプッシュアップの基本

ステマの基本的なプッシュアップでは手の平ではなく拳を床につけ、背中を真っ直ぐにしたままで呼吸と合わせて動作を行う。
呼吸については、息を吸いながら下がって、息を吐きながら上がるというように動作で呼吸を切り換えることが多い。逆のパターンもあり、動作途中で呼吸を切り換える練習もあるなどバリエーションがある。力みで息が詰まりやすい場合呼吸を始めてから動作を始める。
注意点として拳は全面が床につくようにし、拳面の特定の場所に負担が集中しないようにすること、手首が曲がったりもしない。
また真っ直ぐの姿勢を保ちつつもリラックスしていることが重要で、力みが分散して全体として軽やかに動く。

ニー・プッシュアップ

筋力が十分ではない練習者によく推奨されているのは膝をついた状態でのプッシュアップ、ニー・プッシュアップだ。
膝から下の重さが負荷ではなくなるため、プッシュアップをやりやすくなる。
欠点として上半身の練習になっても下半身の練習にならないという問題がある。
上半身をいくら鍛えても、正式のプッシュアップで腰が落ちてしまうような人の練習にはならない。
プッシュアップ時に腕や肩、胸の力が足りずに十分な上下の動作ができない人には向いているが、姿勢を保てない人向きの練習ではない。
また筋力によってはニー・プッシュアップでも低い位置まで体を下げることができない人もいる。

インクライン・プッシュアップ

手の位置が床より高い斜めの状態で行うプッシュアップをインクライン・プッシュアップという。
ベンチや階段、ブロックなど高さのあるものを利用して行う。
欠点として傾斜・練習器具によって手の平をついた練習になりがちなことと、適度な高さの練習器具がみつけにくいことがあるということが挙げられる。
しかしニー・プッシュアップより全身を使う練習であり、筋力の程度に応じて傾斜を変えることで段階的に練習ができる。
ニー・プッシュアップが十分できない人でも高さの調節でできるというのもメリットだ。

プランク

プッシュアップで求められる全身のバランス、姿勢を保つ力やテンションの分散を身につける練習にはプランクがある。
特にプッシュアップの一番高い状態(拳を床につけ、腕を伸ばした状態)で行うハイ・プランクはプッシュアップの姿勢を保ちつつリラックスする練習としては最適だ。
ただし、動作に使う筋力や身体の使い方が身につくわけではないので、例えばプッシュアップで低い位置まで体を下げられないといった問題の解決にはつながらない。
プッシュアップ時に姿勢を真っ直ぐに保てなかったり、特定部位に力みが集中してしまったりする人の練習に適している。

エキセントリック・プッシュアップ

プッシュアップができない人でもプッシュアップの姿勢で身体を下げる動作はできる人が多い。
この下げる動作は筋肉をブレーキとして使う筋収縮で大きな力を発揮できるためである。
この局面をエキセントリック局面と言い、エクセントリック局面だけ行うプッシュアップをエキセントリック・プッシュアップという。
プッシュアップの姿勢になり、体を下げる動作を行い、胸が床についたら、膝をついた状態で最初の姿勢に戻って、再び次のエキセントリック・プッシュアップを行う。
エキセントリック局面の練習は筋肉痛になりやすいので回数や練習後のケアには注意が必要だ。

コンセントリック・プッシュアップ

エキセントリック・プッシュアップとは逆に上昇する局面=コンセントリック局面だけを使うコンセントリック・プッシュアップもある。
通常のプッシュアップでは下降から上昇への動作の切り換えで負荷を感じすぎて力みで動けなくなることがあり、力みがない上昇動作を知るにはコンセントリック局面だけを練習するのが一番理解しやすい。
胸・腹を床につけた状態で拳または手の平、そして足先を床につけてプッシュアップできる状態を作る。
そして身体を上げればコンセントリック局面だけのプッシュアップができる。体を上げたら膝をついて体を床まで下げて再び次のコンセントリック・プッシュアップを行う。
この方法だと通常のプッシュアップで身体を一旦下げてから上げる動作よりも力みなく軽く身体を上げることができる。

これらの練習を必要に応じて組み合わせて行うことで通常のプッシュアップがやりやすくなる。