スペツナズ・ナイフについてのメモ

ソ連・ロシア軍のナイフは、日本ではあまり知られていない。そんなソ連軍のナイフの中でも知名度が高いのは、恐らくスペツナズ・ナイフだろう。ハンドル内部のバネでブレードを射出するナイフだ。ゲームや漫画によく登場している。



このナイフについて、メモとして知っている事を書いておく。

  • スペツナズ・ナイフは、1980年代にアメリカの軍事雑誌でソ連軍特殊部隊スペツナズのナイフとして紹介され、販売もされた。日本でも翻訳書で紹介され、ミリタリーテイストを取り入れたアクション、サスペンス漫画によく登場している。
  • 英語圏ではバリスティック・ナイフ(ballistic knife=弾道ナイフ)と呼ばれることが多い。
  • 動画にも映っている筒状のシース(鞘)は装着時に警棒のように使えるという話も流布したが、実際にそのような用例があったかどうかは不明。
  • このナイフ、実際ソ連軍でどのような位置にあったのかというとあまりはっきりしない。スペツナズKGBで使われたと紹介されたため、日本の漫画でも特殊部隊隊員・元隊員やプロフェッショナルが使う武器として登場することが多いが、どうなのか。
  • ロシア語で調べると、このナイフが特殊部隊で使われた事には否定的な話も見る。ロシア語版Wikipediaの項目もその一例。
  • キエフ戦争博物館に所蔵されているし、ソ連軍向けに製造されたのは高い可能性で事実だろう。ただし、その後コピー品がソ連以外でも作られているのもまた事実なようで、製造期間、バリエーション、製造数、真贋の見分け方など分からないことが多い。
  • 英語版Wikipediaの項目に引用された情報では、スペツナズ隊員養成において、投げナイフに訓練時間を要する状況を改善するために開発されたという。実用されたのか、評価はどうだったのかは不明。
  • しかし一回使えばその場ではナイフは使えなくなり(回収して再利用するのは結構な手間)、消音銃や銃機構を備えたナイフと比べると限定的な状況でしか使えないナイフである。狙いにくいため、有効射程も短い(5m程度とされる。射出の初速は63km/hだが、安定して飛ばすデザインになっていない)。
  • 要するに一回きりの隠し武器的なもので、これがプロの武器としていつまでも漫画に登場し続けているのを見ると、もうちょっと考えてほしいと思うことがある。なお、ロシア軍では消音効果のある弾を発射するナイフNRS-2が存在するため、存在意義はなくなっている。
  • 普通のナイフと見せかけて油断させて使うのが最も効果的と考えられており、こうした用法は犯罪に適しているため、現在では法規制している国が多い。日本ではブレード形状がダガー規制の対象となるので所持できない。
  • そもそもナイフとしてはあまり使いやすいデザインじゃないよね。