脳の中の身体地図

脳の中の身体地図―ボディ・マップのおかげで、たいていのことがうまくいくわけ

脳の中の身体地図―ボディ・マップのおかげで、たいていのことがうまくいくわけ

ロシア武術システマの関係で数年ぶりに読み直した。
この本は、脳が身体やそれを取り巻く空間をどう認識し、処理しているかについて解説した本だ。
人の身体をとりまく空間をペリパーソナル・スペース(身体近接空間)と呼ぶ。人は自分の体をマッピングするボディ・マップでこの空間をマッピングし、位置関係だけでなく空間内の行為遂行能力も計画する。道具を持てばその道具の分ペリパーソナル・スペースに組み込まれる。例えば車に乗って車高ぎりぎりのゲートをくぐる時には車の屋根を自分の頭皮のように感じ、時に頭を下げてしまう。
同書ではこのペリパーソナル・スペースやボディ・マップに関する様々な知識が登場する。武術についての言及もある。

太極拳という武術は、自分のペリパーソナル・スペースを探る優雅で洗練された方法だ。
(中略)
太極拳ジャーナル』誌の編集長バーバラ・デイヴィスによると、ペリパーソナル・スペースの境界の認識を誤っている生徒がいるそうだ。自分の空間を頑なに保持しようとしすぎる者もいれば、あまりにあっさりと“降参して、踏みつけにされている”者もいると言う。太極拳はもちろん、どんな武術を学ぶにも、自分の身体と、身体とペリパーソナル・スペースとの関係を確保することが必要だとデイヴィスは言う。


サンドラ ブレイクスリー, マシュー ブレイクスリー『脳の中の身体地図 : ボディ・マップのおかげで、たいていのことがうまくいくわけ』「7章 身体を包むシャボン玉」(p208)より

この本で扱われている内容のいくつかはシステマの技術にかなり関わる話だ。システマの練習のコアな部分はこのペリパーソナル・スペースの認識や扱いについての練習と考えられる。また、システマのアンコンタクト・ワークとか、コンフォートといった説明に関わりそうな話も同書には出てくる。
しかし同書で紹介されているのはまだ研究途上の話もあるので、理解の参考にしておく、といった程度に留めておくのが無難だろう。