護身と武術の話に関するメモ

最近のTwitterでの話とも関連する護身と武術の話について書いてみる。

  • 格闘技・武術は習って即座に護身に役立つかと言うとそうではないことが多い。
  • このため海外の護身術は、しばしば格闘技や武術、特に伝統武術の技術は無駄だということを宣伝に盛り込んでいる。
    • Googleで「self defense martial arts myth」と入れて検索すればその種の文章は無数にみつかる。
    • 護身術の指導者は武術の型を護身のためのシチュエーションやシナリオと見て批判していることもある。それはさすがに違うのではないかと思う。
  • なお、格闘技、武術でも市民の護身用のクラスやセミナーではそれに合わせた内容にアレンジしていることがある。
  • 護身術にも色々あるが、多くの場合相手を拒絶・抑止するための発声やボディランゲージ、身を守るための心理的・肉体的トレーニング、現実的なシチュエーション・シナリオに基づく練習、短期間で習得できるカリキュラムなどをセールスポイントとしている。
  • 各種護身術を見ると、発声・ボディランゲージの練習、心理的なブレーキのはずし方などはともかく、シチュエーション再現については、どこまで現実に即しているのか、練習していないシチュエーションに遭遇したらどうするのかという課題はあるかもしれない。その種の団体の公式サイトや動画を見ると、考え方が色々あることが伺える。
  • 格闘技・武術にしても、護身のシチュエーションということを想定することはあるわけで、現実の状況については考えざるをえない。
  • 前後の状況を踏まえた現実に起こりうるシチュエーションを考えるのは、結構難しい。
  • 以前、北米では「喧嘩では90%が地面に転がっての戦いになる」という説があった。グレイシー柔術が護身術としての普及のために広めた説とも言われる。
    • この値は警察官が容疑者を逮捕する時の格闘にも当てはまるとされた。しかし実際に警察の統計に基づいた調査Going to the Ground: Lessons from Law Enforcementによると、そんな極端な偏りはなかった。
    • ただし、これは警察の例であり、非力な人間が襲われるようなシチュエーションとはだいぶ違うだろう。
  • 指導を受ける人間について考えることも重要。中にはどう考えても一般人が実行できない技術を護身用としてデモンストレーションしている例もある。
  • 海外(特にアメリカ)の例を見ると、護身術の指導者にDVやレイプといった被害からのサバイバーが指導者にいるスクールも結構ある。この一例は渡辺由佳里のひとり井戸端会議: 「犠牲者」にならないための護身トレーニングで紹介されている。
  • アメリカの大学では学生向け護身術コースを用意しているところがあり、そこから技術の習得や性差についての研究もある。
  • 護身術と格闘技・武術はつながりが薄いところと濃いところがあり、本格的に調べたら恐らく論文になるくらい情報がある。