ロシア武術システマの最近の練習の段階に至るまでの話を書いておく。
相手が掴んでくる種類の練習において、相手の動きをストップさせるのではなく相手からもらった動きを自分が生かすというのは、かなり早い段階で理解できることだと思う。
やがて練習を重ねると、相手からもらう動きを感じる精度や自分の動きの繊細さが向上し、小さい領域でも相手の動きを自分の動きにできるようになる。
例えば相手の手の平、さらには指一本の範囲でも力の強弱やバランスの偏りがあり、これを利用して相手をコントロールすることができる。
相手のコントロールについても、相手が自らの緊張やバランスの偏りでそう動かざるを得ないようにしむけることができるようになってくる。
この辺の理解は、何らかのきっかけで劇的に進むか、徐々にできるようになるか、人によって違いがあるようだ。
こうした段階を経るにつれ「相手の動きに合わせて自分の動きを調節する」という受動的な対応が迂遠に感じられるようになる。相手の動きを完全に受け止めてから利用するより受け止めずに相手を制するほうが楽だからである。
また、互いに離れた状態で与える影響についても習熟が進み、相手と接触する時にはすでに相手を制する準備が完了しているようになる。
そこから「相手の行動予測を感じてそれに対して自分の予測を調節する」という事も同様に迂遠に感じる段階になる。
後から動く速さ〜『システマを極めるストライク!』で紹介された論文について〜 - 火薬と鋼に書いたように先制攻撃よりリアクションのほうが速い。しかしその利は僅かなものであり、思考や予測によって合わせるとその利点は失われる。最近の練習はリアクションの利を生かすという側面もある(結果的にそうなる)。