10のネット小説投稿サイトに登場するシステマを分析

ここ最近、ネット小説投稿サイトのテキストマイニング分析を行っている。
「小説家になろう」「ハーメルン」に登場するシステマを分析する - 火薬と鋼
「小説家になろう」「ハーメルン」に登場する形意拳を分析する - 火薬と鋼
「カクヨム」に登場するシステマを分析する。 - 火薬と鋼
作品数の少なさが結果の偏りにつながっているようなので、今回は複数の投稿サイトを統合して対象作品総数を増やして分析してみた。
分析自体は以前と同様の共起ネットワーク図作成だ。
今回分析対象としたのは以下の10サイトのシステマが登場する小説。
小説家になろう」:63件
ハーメルン」:70件
カクヨム」:25件
ノクターンノベルズ」(「ムーンライトノベルズ」「ミッドナイトノベルズ」を含む):27件
Arcadia」:47件
星空文庫」:1件
エブリスタ」:2件
アルファポリス」:10件
魔法のiらんど」:1件
野いちご」:5件
以上のうち、格闘技とは違うシステマが出てくるものは除外し、また同作品が複数のサイトでみつかるものは一つに絞った。
なお、「ベリーズカフェ」など上記以外の投稿サイトも検索しているが、他のサイトに同じ作品が投稿されていたり、ロシア武術のシステマがヒットしなかったりといった理由で含めていない。

共起ネットワーク図

出現パターンの似通った語が線で結ばれている。共起の程度が強いほど線が太い。出現数の多い語ほど円が大きい。また中心性で色分けしてあり、水色・白・ピンクの順に中心性が高い。

名詞に限定した共起ネットワーク図

まとめ

  • 対象となる小説数を増やした結果、特定の小説にしか出てこない語句が図に出ることは減少した。
  • ロシアの格闘技、近接格闘や軍隊格闘技として説明されていることが分かる。
    • 図に「殺人」と出ているのは、作中のシステマに「殺人術」「殺人格闘術」などの説明がついていることが多いため。この点は海外小説でシステマが「brutal martial arts」(残忍な格闘技)としばしば説明されている点と奇妙に符合する。
    • ネット小説では創作によくある軍隊格闘技のイメージ=殺しの技術・容赦の無さといったものが強調されがちで、システマらしい破壊の否定や穏やかさが登場することは無い。
  • 以下のようにシステマの4つの基本原則に対応した語句が図に出ており、よくネット小説で解説に使われていることが分かる。

  • 図に登場する格闘技名は、システマと対比されたり同時に学ばれたりするもので、一般的に普及している格闘技の他に軍隊格闘技・ロシア格闘技・マイナーな格闘技がある。システマの使い手と戦う相手が使う格闘技も含まれる。
    • 図には出ていないが「カポエイラ」も登場数は多い。図に出ているものも出ていないものもマイナーな格闘技の登場数が多い。
    • ステマが登場する作品の登場人物は複数の格闘技を学んでいることが非常に多い。システマと別の格闘技を組み合わせた技術で戦うという登場人物の例も複数ある。
    • ステマと他の軍隊格闘技を習得したとしている登場人物も多く、図の「CQC」「コマンドサンボ」「クラヴマガ」はほぼこのパターンで登場している。
    • 「CQC」については、よくある誤解(本来は軍警察の近接格闘全般を指すが特定の様式の軍隊格闘技を指すと思われている)に基づいた用法でしか登場しない。
    • 合気道」については他の武術と異なり、一時期システマの比喩に使われた「ロシアの合気道」が説明に使われる作品もある。
    • 「剣術」はシステマの技術とは関係なく、ネット小説で剣術がよく登場していることの現れである。
  • 「ナイフ」など、武器を示す語句が出ているのは、システマが軍隊格闘技だからそれらしい活躍の場を持たされるため。
    • しかし個々の作品を読むと武器戦闘でシステマらしい技術が出てくることは少ない。
    • 例えば「銃」はガンアクション、銃撃戦で使われており、銃を奪うgun disarmingやシステマの射撃技術は登場しない。
  • ステマの原則の説明以外に痛みに対処する呼吸法について説明されていることがあり、図にも「呼吸」以外に「ブリージング」が出ている。
  • 技術的な語としては「ストライク」も登場するが、登場する作品は少ない。また「コネクト」が登場する作品はない。