格闘技のいいとこ取りをするネット小説とシステマ

最近読んだネット小説のシステマ描写から - 火薬と鋼の続き。
ネット小説では若くして多数の格闘技(いわゆる武道・武術も含む)を学んだ主人公がよく登場する。
そういった主人公はしばしば格闘技のいいとこどりをしている。
例えば打撃とフットワークで別の格闘技に由来する技術を使うなど、個々の武術の断片だけを取り出して使うのだ。そうすることで主人公の器用さや才能を示すことができる。
こうした格闘技描写がある作品の説明を読むと、作者が様々な格闘技のどの部分を長所だと認識しているかが分かる。


そしてこのパターンでシステマを登場させている作品で商業出版された作品もある。
異世界支配のスキルテイカー 〜ゼロから始める奴隷ハーレム〜』だ。

異世界支配のスキルテイカー ~ゼロから始める奴隷ハーレム~ (講談社ラノベ文庫)

異世界支配のスキルテイカー ~ゼロから始める奴隷ハーレム~ (講談社ラノベ文庫)

異世界ものを読みなれていないとつらい小説である。
漫画版もあって、ニコニコ静画でシステマが登場する第一話を読むことができる。格闘マンガのような描写があるわけではない。
異世界支配のスキルテイカー ゼロから始める奴隷ハーレム / 漫画:笠原巴 原作:柑橘ゆすら - ニコニコ静画 (マンガ)
この作品に出てくる主人公が使う「近衛流體術」は上述したようないいとこ取りの格闘技である。
近衛流體術とは『世界各国に存在する全ての武術の長所』を取り入れることで、《最強》を目指すというコンセプトを掲げている異流武術である」と説明されている。「異流武術」という見慣れない説明は謎だ。
様々な武術の長所を使いこなす主人公はシステマも使う。

現存する格闘技の中でも極めて稀な1対多の戦闘を想定して作られたロシアの軍隊格闘術――《システマ》を極めた悠斗であれば、集団戦もお手の物である。
ステマ特有の相手に狙いを定めさせない流麗な足運びは、オークたちを翻弄し続けた。


異世界支配のスキルテイカー 〜ゼロから始める奴隷ハーレム〜より

類似の説明を使っているネット小説が他にもあることから、これがシステマの<創作上使いやすい>特長だと思われているのだろう。
漫画で最初にシステマを登場させた『アクメツ』でも「対多人数戦闘を想定した格闘技」と書かれていた。
実際には多人数戦闘を織り込んだ武術は他にもあるが、知名度や説明の流用しやすさから考えて、今後も創作では「多人数戦闘用の格闘技と言えばシステマ」という扱いが続くと思われる。