今年夏に調べたシステマが登場するネット小説102作品を調べてみた - 火薬と鋼を継続し、更に作品数を増やしてみた。
前回同様、ロシア武術システマが登場するネット小説の作品を全て読んで調べている。
今回分析対象としたのは以下のサイトのシステマが登場する小説158作品だ。
作品タイトルごとに確認し、登場場面や設定を読んで調べた結果である。
分析対象サイト
「小説家になろう」「ハーメルン」「カクヨム」「ノクターンノベルズ」(「ムーンライトノベルズ「ミッドナイトノベルズ」を含む)「Arcadia」「アルファポリス」「エブリスタ」「野いちご」
複数のサイトに投稿されている作品は最終版があるサイトで調べている。
各種数字
作品数 | |
対象作品数 | うち言及のみ |
---|---|
158作品 | 47作品 |
確認したネット小説投稿サイトでシステマが登場する小説は158タイトルあった(評論・エッセイ・あとがきに登場する作品は除外した)。
このうち例や説明のみに登場する小説は47作品あり、登場人物がシステマを使う小説は111作品あった。
システマが登場するネット小説のうち、言及のみのものも含めて書籍化作品は以下の4タイトルである。
『異世界支配のスキルテイカー』、『終天の異世界と拳撃の騎士』、『竜の専属紅茶師』、『ひとりぼっちの異世界攻略 〜チートスキルは売り切れだった』
システマ使いの属性 | |
使い手の性別 | 男66/女40/複数他5 |
---|---|
主人公である | 61作品 |
スペツナズである | 3作品 |
他の武術も習得 | 50作品 |
一作品で複数の男女が使う作品や性別が不明の作品を「複数他」とした。
スペツナズの集計には元スペツナズ隊員も含めている。
多くの作品でシステマを使うのは民間人・生徒であり、特殊部隊隊員や兵士がシステマを使う話は少ない。大半の作品でシステマ使いは武術や護身術として学んでいる。ただし、軍とつながりがあったり軍学校のような特殊な学校の生徒が想定されていたりする場合はある。年齢が明記されていない作品が多いが確認できる記述から判断すると10代が多い。
システマ使いの出身地 | |||||||
国・地域 | 日本 | ロシア | 英独仏 | アメリカ | 中近東 | 架空 | 不明 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 70 | 14 | 6 | 3 | 1 | 7 | 10 |
ネット小説のシステマ使いのほとんどは日本出身である。ただしロシア滞在経験者、ロシア系日本人なども日本出身者には含まれる。
前回ヨーロッパとした作品の内容をよく確認するとイギリス、フランス、ドイツしかないため3つの国名でまとめた。
架空とあるのは架空の国や異世界を出身地としている。
他の習得武術 | 件数 |
---|---|
軍隊格闘技 | 30 |
中国武術 | 28 |
柔道 | 19 |
空手 | 18 |
合気道 | 13 |
ムエタイ | 10 |
剣道 | 8 |
ボクシング | 7 |
カポエイラ | 7 |
テコンドー | 6 |
少林寺拳法 | 5 |
サンボ | 5 |
ブラジリアン柔術 | 4 |
軍隊格闘技は複数の格闘技をまとめている。内訳を見ると最多はクラヴ・マガの10件である。コマンドサンボ4件も軍隊格闘技に分類した
中国武術は複数の門派をまとめた。最多は八極拳の6件、次に多いのはジークンドーの5件である(ジークンドーを中国武術にカテゴライズしていいかどうかは疑問もあるが)。
また、この表に記載した以外に1〜3件しか登場していない格闘技が他にあるが、表が長くなるため入れていない。
システマ以外の習得武術数 | 件数 |
---|---|
0 | 59 |
1〜2 | 26 |
3〜4 | 7 |
5〜6 | 6 |
7以上 | 13 |
システマ以外にどれだけの数の武術を学んだかを集計した。
0件はシステマのみを学んだことを指す。
この数字から、多数の武術を学んだキャラクターよりもある程度経験を絞ったキャラクターが多いと言える。
7以上には「等」「多数」といった記述で武術数が明確には分からないものも含む。
なお、今回確認した作品で最も多くの武術を学んだキャラクターは62種の武術を経験していた。
メモ
システマを登場させるネット小説の設定から、珍しい武術を出したいとか、何らかの特別なものを出したいといった意志を感じることが多い。しかし設定に盛り込んでいるわりに具体的な描写が出てくる話はかなり限られる。また、多数の格闘技を学んだ設定の作品でも剣術流派名や柔術流派名・空手流派名は全く登場しない。システマが登場する話に限らず、多数のネット小説でそういった武術知識の偏りが見られる。
とりあえず軍隊格闘技をやったことにしておけば強い・実戦的であるといったフレーバーとして使われている面もある。米軍所属でもないのに米軍の格闘技を学んだキャラクターが登場する作品がいくつもあるのも、イメージだけで使われている例と言っていいだろう。システマの説明に「殺人術」と書いている作品が複数あるが、これも恐ろしげなイメージとしてのシステマの表現だ。
システマの知識には他作品の影響もある。『ハヤテのごとく! CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU』第二夜のシステマを解説する - 火薬と鋼の作中のシステマ解説に影響を受けたネット小説の例を今回発見した。恐らくネット小説同士の影響もある。