町田市立国際版画美術館「日本の版画1200年―受けとめ、交わり、生まれ出る」

日本の版画1200年―受けとめ、交わり、生まれ出る | 展覧会 | 町田市立国際版画美術館

先日、町田市立国際版画美術館の入場無料日に行ってきた。
開催している企画展の「日本の版画1200年―受けとめ、交わり、生まれ出る」は、日本の版画史を文化交流の視点で解き明かす展覧会だ。
経典や仏教美術に始まり、西洋の透視図法の影響を受けた風景版画、日本の中国や西洋との関わりで生まれた近世の版画・浮世絵、西洋画の影響を受けた新版画、日中の版画交流、占領下における新しい版画の胎動、国際版画展の時代といった展示がある。

《地天像》
室町時代の与田寺版十二天像の一つ。墨摺手彩色。
日本の版画は平安から中世まで仏画が多い。

《西湖十景図》
中国・清時代の蘇州版画。春節に無病息災のために年画という一枚摺版画が飾られるが、そのための版画。中国の様式だがこうした版画に西洋画の影響も入ってきた。

安永4年(1775)の建部凌岱『海錯図』 よりアカエイの図。奇妙な顔をしている。

葛飾北斎《諸国瀧廻り 相州大山ろうべんの瀧》
ヨーロッパから日本へ輸入された化学合成顔料「ベロ藍」が使われている。

月岡芳年《魁題百撰相 鷺池平九郎》
人物の瞳に反射する光が白い点として描写されており、洋風表現を取り入れたものだという。

小早川清《近代時世粧 瞳》
近代時世粧は昭和初期のモガをアール・デコ調に描いた6枚揃いの木版画連作の一つ。

橋口五葉《髪梳ける女》


興味深かったのは「出版文化の隆盛―拡散するイメージとその受容」に展示された《須弥山儀図》の解説で、江戸後期に西洋の地動説が入ってきたことにより仏教的世界観が批判されることへの反応から須弥山の図が作られたという話。
そして今回「版画誌がつなぐネットワーク―日本と中国の「創作版画」」の展示解説で魯迅と日中版画の交流について初めて知った。
また、「占領下における新しい版画の胎動―中央と地方、モダニズムとリアリズムの往還」の展示で荻窪恩地孝四郎の版画と「一木会」の活動について知ることができたのも良かった。

特集展示の「ふぞろいの版画たち―西洋版画のシリーズとステート―」は同じキリスト受難のシリーズの版画家による違いを見せる展示と、版の劣化や作者自身による改変による版画のステートの変化を追った展示だ。
ステートは太田記念美術館「深掘り!浮世絵の見方」の刷りによる変化を思い出した。