軍用腕時計

 手持ちの腕時計の調子が悪くなった。予備の時計はあるが、バリエーションが少ないとちょっと困る。そこで腕時計をオーバーホールに出す傍ら、新しい時計でも買おうかとちょっと情報収集をしてみた。しかし相変わらず時計の雑誌は店とメーカーに拠った情報ばかりであまりアテにならない。軍用時計、またはタクティカルウォッチの類もその種の雑誌で扱われているが、軍や特殊部隊で採用されているとか使われているといった情報は信が置けないものが多い。
 まず、「採用」というと厳密には官給品として支給されるものを指すはずだが、ただ単に使われているという意味で「採用」という表現を用いているような場合がある。それどころか本当に使われているのかどうか怪しい時計もある。また、軍用時計マニアにはよく知られているMarathonやStocker & Yale、それにCWC Watchは雑誌ではほとんど話題になっていない。
 その種の雑誌を読むような人はあまり深く追求しないということだろうか。実際、採用されているかどうかと時計の良し悪しは必ずしも関連がないが。
 以下、いくつかめぼしい製品について書いてみよう。知っている人には今更の話ばかりだと思うが覚え書きとして残しておく。

 NSNまで付与された軍用時計なのだが、使われているという話を聞かない。私が所属するあるフォーラムでもこの時計がSEALSに支給されていない/使われていないことは書かれていたが*1、じゃあ実際どの程度支給されたのか。その際の評価はどうだったのか。その辺が曖昧なまま「軍採用」の情報だけが一人歩きしてしまっている。

 NSN付与の採用例も一部にあり、また採用ではなくとも広く使われているG-Shock。一番有名なのは通称Mil-Shock*2と呼ばれるものだろうか。最近見た例では海兵隊DET-1の射撃練習の雑誌記事で隊員全員がG-Shockを使っていた。最もこれは全員バラバラのデザインだったので官給品ではなく個人購入ではないかと思う。いくつかの軍用時計のメーカーと違い、G-Shockは固有のイメージを既に確立しているので軍で使われていることをあまり売りにしていない。
 そう言えば以前、CASIOがMil-Shockを製品として出すという噂があったのだが、結局発売されたのは違うデザインのDW-5600B-1AJFだった。

 この辺になるとまた微妙だ。LEDライトや充電機構はリコーの製品と全く同じ。外部のパーツを変えただけの時計なのだが、一ヶ月で充電が切れる時計というのは果たして軍用に向いているのだろうか。特に外国での活動を意識すると電池式クォーツか機械式のほうが良いように思うのだが…。あと海外と日本の価格の差が謎だ。

 トリチウム利用の時計を出しているNITEだが、スウェーデン対テロ部隊採用とか、SASで使われているとか確認の取り難い情報が宣伝文句にしばしば出てくる。果たして実際使われているのだろうか…。

 タクティカル・ギアで有名な5.11のHRT Watch。スナイパー用のソフトウェア内蔵というかなり特殊な時計だ。これもアメリカと日本の価格差が結構な額になっている。かなり用途を限定したソフトウェアだと思うのだが、現場で使っている人の感想が知りたいところだ。