拳銃のフロント/バックストラップの加工

 ハンドガン(オート)のカスタマイズでは、しばしばフロント/バックストラップに滑り止めの加工が行われる。最も知られているのは縦または横に何本もの溝を加工するセレーション(serration)、縦横に垂直に交わる溝を加工するチェッカリング(checkering)の二つだ。こうした加工はファクトリー製品でも多く行われており、溝の細かさ(20lpi、30lpiなど)も様々なものがある(細かく言うと、機械加工と手加工がある)。この二種類の加工については日本のトイガンでもしばしば再現されているのでよく知られている。
 この他、スティップル(stippling)という加工もある。ボブ・チャウ・カスタムやNovakのハイパワーなどで行われている。
http://www.novaksights.com/images/GUNS/bhp/hand-matte-back.jpg Novakのスティップル加工。 Novakではstippleと言わずにMattと呼んでいる。
 スティップルはハンマーで鋭いノミのようなパンチを打ちこんで刻む。手間がかかるため、ガンスミスによるカスタムでしか見ることはない。スティップルのパターンはガンスミスによって微妙に違いがある。
 近年(と言っても結構前から)、この三種類以外により多彩な滑り止め加工を行うガンスミスも増えてきた。いくつか紹介してみよう。


 比較的多くのガンスミスによって行われているのはゴルフボール加工(golfballing ; golfball treatment)だ。これはゴルフボール表面のディンプルのようなテクスチャーを言う。
http://www.rogersprecision.com/sitebuildercontent/sitebuilderpictures/11.jpg Chuck Rogersによるゴルフボール加工
http://www.legacy-custom.com/government_highres.htm Stan Chenによるゴルフボール加工


 波状のスカロップ加工(scallopping)も多くのガンスミスによって行われている。
http://www.harrisoncustom.com/LargeImg.aspx?image=http://www.harrisoncustom.com/Images/514.jpg John Harrisonによるスカロップ加工


 また、楕円などの変わったパターンを加工する例もある。こうした加工は、特に名前がない場合は単にテクスチャリング(texturing)と呼ばれる。
http://www.heinie.com/images/1911tacpistol.jpg Richard Heinieによるテクスチャー加工


 特徴的なテクスチャーに独自に名前をつけているガンスミスもいる。例えばGemini CustomsではDragonskin、Snakeskin、Fishscaleの名をつけたテクスチャー加工を行っている。
http://www.geminicustoms.com/SpecialServices/default.htm Gemini CustomsのWebサイト。加工例も掲載。


 以上のような新しい加工はガンスミスだけのものではなく、S&WのM945のスライドやKimberの一部製品などで似たような趣向のものが作られている。クラシックなスタイルに馴染んだ人間からすれば奇異に見えるものもあるが、どれもその実用性やデザイン性が評価され、受け入れられてきている。最も、ガンスミスによる加工もスケートボード・テープを貼るほどの効果はない、という意地悪な見方もある*1


 さて、皆さんはどれがお好きだろうか。

*1:例えばThe Gun Digest Book of the 1911. vol. 2にはチェッカリングに対してそういった趣旨の評が載っている。