あまり事前情報を仕入れないようにして行ったのだが、なかなか楽しめた。難点は、よく言われているように政治的な思想の胡散臭さが鼻につくことか。スパルタが自由や民主主義ってのは変だ。同じように作中人物が兵士に政治的思想的な戦意高揚をしている長谷川哲也『ナポレオン〜獅子の時代〜』(少年画報社)のほうは楽しいんだが。「300」は作り手が本気で信じこんでいて、観客に訴えたいと思っているから胡散臭いのかもしれない。
それはさておき、スパルタ戦士のシグルイっぷりが素晴らしい。「名誉の戦死が迎えられる」と歓喜したり空が染まる程の矢の雨の下で笑ったり。「笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である」
そしてペルシア軍のフリークスっぷりがひどい(褒め言葉)。あの兵士や獣はペルシアというよりむしろロードオブザリングの世界だ。クセルクセス王の名前なんて澁澤龍彦の本でしか知らなかったが、あんな奇人変人だったはずはないので、見事な史実の改変だと思う。スパルタにしても裸マントで戦ってるあたり、かなり史実を歪めている。だが、それがいい(大ふへん者)。
筋肉とフリークス好きな人には一見の価値がある映画だと思う。