今更巨人の骨なんて信じるやつがいるのか

あごひげ海賊団 : 巨人族みたいな遺体が見つかった
はてなブックマークを見ていたら上のような巨人の骨を発見したという記事をみつけた。
どう見ても実在のものではなく、画像を加工しただけの代物だ。
この手の巨人の骨や化石がみつかったという話題はアメリカを中心に人気で、中には真面目に受け取っている人もいる。
上のニュースもリンクを遡ると海外の陰謀論者のサイトhttp://www.concienciaradio.com/gigantes_grecia.htmにたどり着く(今は消滅)。
何故この手の巨人が受けるかというと、旧約聖書には巨人族ネフィリム(wikipedia:ネフィリム)の記述があり、巨人の骨や化石がみつかれば聖書の正しさを実証する根拠が増えるからだ。
何度も発見の報(虚報)があるノアの箱舟と同じようなものだと思っていい。
ただし、確認が容易な巨人の場合、実物があっても簡単にでっちあげが分かる。
古い例で有名なものに「カーディフの巨人」がある。
これは巨人の化石と偽って特別にあつらえた石膏像だ。
Skeptic's Dictionary: カーディフの巨人
Redirect to Lockhaven.edu
さすがにこれはどう見ても作り物なのでバレたが、当時は信じる人もかなりいたようだ。


後の時代の人間はもっとずるく、実物を出さずに写真と逸話だけを提示し、「マスコミが隠した真実」などと銘打って情報を流している。
画像を作成・編集した人間は遊びのつもりでも、勝手にキリスト教原理主義創造論者やオカルト好きに引用され、適当な逸話や設定が足されていることもある。
しかし、人間の骨をそのまま拡大したような形状の巨人はありえないだろうとか、本当なら報道されているだろうとか基本的なツッコミ所が多いのだ。
巨人の骨には有名な例がいくつかあり、今回の画像もその一つで、とうにネタが割れている。
下の都市伝説検証サイトを見てほしい。有名な事例が加工前の画像へのリンクとともに解説されている。
FACT CHECK: Giant Skeleton Uncovered in Saudi Arabia? 都市伝説検証サイトの記事
http://news.nationalgeographic.com/news/2007/12/071214-giant-skeleton.html National Geographicの検証記事


英語が面倒な人のために簡単に紹介しよう。
まずはサウジアラビアで発見された巨人の骨という触れ込みの画像。
http://www.snopes.com/photos/odd/graphics/giantman.jpg 
しかしこれは編集元を遡るとhttp://www.worth1000.com/というサイトに投稿された画像編集のフェイクだ。
ここの「考古学的異物」をテーマとする画像編集のコンペに投稿された画像と判明している。
Giant Skeletons Seem Too Real To Be A Hoax 投稿画像
更に遡ると編集元はAerial Views of Hyde Park Dig Site(webarchive)にあるマストドンの化石発掘の画像であることが分かっている。
この画像の説明を変え、インドでみつかった巨人の話にされている例もある。
Bhima's son Gadotkach like skeleton found 同じ画像がインドで発見されたことに。


そして一番最初に挙げたサイトで話題のギリシアでみつかったという触れ込みの画像の一つは、シカゴ大学のPaul C. Serenoが発掘した草食恐竜の化石の発掘現場の画像が元になっている。
University of Chicago News Office: Sereno Expedition images 加工前画像は上から5番目
多くの巨人の骨の画像は、現実の化石発掘などの画像に人骨の画像を加えることで作成されているようだ。
この他にも類似の巨人の骨の画像は他にもあり、来歴が解明されていないものもあるが、これまでの経緯と紹介文のおかしさから悉くフェイクであることはまず間違いない。
しかしまるで本当のことのように紹介する人は絶えない。
この現代にあの手の記事や画像を信じる人がどれだけいるかは疑わしくもあるが、うかつな人や『ムー』の記事を信じるような人、創造論を信じるような人には信じる人もいるようだ。