集団で戦え〜第二次大戦の銃剣集団戦術から〜

集団戦術を描かないフィクション

 以前、あるイベント会場でナイフに関する現実とフィクションの話を来場者とした。色々な話をしたが、その中の一つに「集団戦闘をどう描写するか」という話題があった。
 日本の漫画やゲームでは、軍事的な知識に基づく集団戦闘をうまく描写した作品は少ない。例えば多人数でも一対一を繰り返すか、全員が同時に同じ動きをする。たまにコンビネーションを駆使する敵がいたとしても、それは集団戦闘に慣れている軍人ではなく兄弟や双子のような出自が理由にされている。
 実際には銃撃戦でも白兵戦でも、警察や軍では互いにサポートし合う戦術をとる。銃のマガジンチェンジの際に他のメンバーがカバーする、警戒する範囲や攻撃方向を振り分ける、といったように。
 軍隊格闘術と民間の格闘技の大きな違いもそこにある。格闘技で、味方複数で敵一人を倒す技術を習う人がいるかどうかを考えれば容易に理解できるだろう。一般にスポーツ化した格闘技は一対一の状況しか想定しない。他方、実戦的な武術は多人数の戦闘に対応する技術を備えている。それでも多対多ではなく、敵が複数で味方がいないことを想定しているものがほとんどだ。これに対し、軍隊格闘技では敵・味方が複数いる状況を想定した戦術を基礎から教える。

銃剣の集団戦術

 前置きが長くなったが、今回は実際に軍で集団戦闘の技術をどう教えているか、第二次世界大戦中の米軍の教本を元に説明する。
 ちょうどはてなブックマーク経由でかつての銃剣訓練の話を見たので(はてなブックマーク - 下手な銃剣術でも)、それとも関連している。
 画像や情報の出典は1943年の米軍のマニュアルFM23-25から。
 図中の白丸は味方、黒丸は敵を示している。


 まずは敵一人、味方二人の状況。図のように離れて接近する。

 そして下図のように片方が敵と正対した際にもう片方の味方は反対側から攻撃する。もし敵が反対側の相手に対処しようとしてターンすれば正対していた相手に対して背を向ける事になり、簡単に攻撃を受ける。

 要するに味方がいる時は同じ方向からではではなく逆方向から攻撃することが基本である。味方ができるだけこうした位置をとり、敵にこうした位置をとらせないことが集団戦術の要となる。
 戦闘におけるイメージ。

 次は味方3人、敵2人の場合の戦術。左右の味方は左右に分かれて側面に移動、敵を攻撃する。

 図のように一対一で戦う味方二人に対し、フリーになった中央の味方一人が加勢する。フリーの味方は側面攻撃を行う。もし攻撃された敵がそれに対処しようとしてターンすれば、正対している味方に対して隙を作ることになる。

 次は味方2人に対して敵3人という不利な状況。
 味方はそれぞれ中央の敵を避け、両サイドの敵を側面から攻撃する。どちらかが一人の敵を片付けたら残った敵と戦う。味方がフリーの敵に攻撃されないようにポジションをとることが重要。

 最後は味方1人に対して敵2人という状況。

 即座に片方の敵の側面に移動して攻撃する。敵に挟まれないように素早く移動し、近い敵を挟んで遠い敵がいるようにする。そして近い敵を倒すことに集中する。自分がまず相手をする敵をフリーの敵の壁になるように動くのがポイントだ。



 以上の戦術は古いもので簡単なものだが、その分理解しやすいと思う。
 こうした集団戦術は進歩しながら現在も使われており、銃撃戦と白兵戦が組みあわさって更に多様なバリエーションが存在している。映画などではこうした集団戦術を再現しているものがあり、知識があると一層楽しめる世界がある。