図書館の委託とパワハラ

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その日、私はある知人から、勤め先を辞める事になったという話を聞いた。
彼がその勤め先…ある私立大学の図書館で働いて半年になる。正規職員ではなく、委託業務のチーフとしてだ。私はその図書館と直接関わりはなかったが、その図書館の評判はよく知っていた。その図書館で派遣・請負として入った人間は、ほぼ全員一年以内で退職していたのだ。
だから彼がその図書館に勤務するという話を聞いて「止めたほうがいい」と言ったのだが、聞く様子はなかった。彼はこれまでも大学図書館の派遣や請負で一スタッフとして働いていたが、仕事にも給与にも不満があり、チーフとして働きたがっていた。それにこの話をした時にはもう彼の契約も済んでいたはずだから、後には退けなかったのだろう。


その後、彼からその図書館については断片的にしか話を聞いていない。だが、私は別方向から継続的に話を聞いていた。私はその図書館の管理職(仮に課長としておく)の人と交流があり―といっても相当目上の人で、図書館の世界では大物であるので、友人というのとは違ったが―図書館の実状を何度も聞く事があったのだ。とにかくその課長は請負の人員の能力、態度の問題について愚痴をこぼし、思い出しながら腹を立てていた。
ここまで読んで察しの良い人ならもう分かったと思う。この課長がその図書館で委託職員が辞める元凶なのだ。有能な人なのだが、実務経験は過去の時代の特定分野に限られていた。課長は、現場の人間には受容しがたい提案や指示を行い、しかも説明が不十分な事が多い(日常会話でもそういう傾向があり、私も課長の話は推理しながら聞く他なかった)。そして自分の想定通りではないと怒り出し、機嫌の良し悪しで人の評価まで変わるような人だった。こんな人の下で働く人間は大変だ、という評判を数人から聞いている。私は、その課長が熱意があり、一定の分野で有能であることは確信しているが、同時にその能力が限定的なものであり、他人の言うことを聞かず、上下関係の中では抑圧的であることもよく知っている。


委託として入った彼は、しばらくは我慢していたらしい。夏前には年度いっぱいで辞める決意をしていたが、仕事の進め方で対立するたびに過去の失敗や行き違いまで持ち出してくるので我慢できなくなったようだ。
彼も仕事をそつなくこなす訳ではなく、話を聞いただけでも失敗はしているようだ。それにしてもその課長は本来法律上してはいけない業務指示を日常的に行い、その発言にもしばしばパワハラが含まれている。おまけに委託の人間と机は隣り合っている。確かに耐えがたいだろう。知人が辞めた後、あまりに委託の退職が多いその図書館の業務は滞りが多く、雰囲気も悪いと聞いている。


以前書いたエントリ問題ある図書館に非正規で勤めてしまった新人に贈る - 火薬と鋼では、業務環境を中心に語ったが、今回のように特定個人に起因して図書館業務が崩壊することもしばしば起きる。特に正規の職員で他の職員、派遣や委託にパワハラを行っている人の話は色々と伝わってくる。中にはそういったジャイアンのような人間に加えてスネ夫のように腰巾着になって他の人間をいじめる者もいる。私もその種の人間関係の悪い図書館で働いたことがあるが、あれはつらい。そういった図書館の募集に対して事情を知っていてもたかをくくって応募する人もいるのだが、全く勧められない。派遣や請負の図書館職員は(臨時や正規でもあることだが)企業にも大学にも守られない。