ファラデーもベンジャミン・フランクリンもそんな事は言ってない

はやぶさ2について、松浦氏のブログに今後の計画が危ぶまれている現状についてのエントリが掲載された。


はやぶさ2、予算の危機について: 松浦晋也のL/D


JAXA内ではこの件がどのような認識になっているのかも気になるところだ。
はやぶさ2の継続は私も希望しているが、この記事に気になる部分があった。

ファラデーの逸話(野田篤司 (@madnoda) on Twitter)
ファラデーの逸話『「磁石を使ってほんの一瞬電気を流してみたところで、それがいったい何の役に立つのか」と問いかけた政治家に対し、「20年もたてば、あなたがたは電気に税金をかけるようになるでしょう」とファラデーは答えたという』出典元:電気史偉人辞典



この話、何かに似ていないだろうか。
かつて事業仕分けの批判で引用された、ベンジャミン・フランクリンの逸話である。

あのときの事業仕分け人に教えるべき、昔の偉人の回答
ベンジャミン・フランクリン は電気の研究がどんな役に立つのかと、ある婦人に尋ねられた。
答えは、「おくさま、生まれたての赤ん坊は何の役にたちましょうか。」
引用:機械の中の幽霊 p183 胚の戦略



これらの逸話の共通点は、まだ用途・成果が判然としていない科学技術について、価値を認識できない一般市民と将来の可能性を説く科学者という構図で成り立っているところだ。後世の我々は、その後の電気の発展と重要性を知っているからこうしたエピソードに感銘を受けるわけだが、当時そこまでの将来性を考えられたかどうか疑わしい。
もちろん未知の分野を研究する意義はあるわけだが、これらの逸話は後に実現された「将来の実用性」という前提部分にかなり重点が置かれており、そこがこれらの話のうさんくささでもある*1
そして、よく似た逸話が二つある時点で、実話かどうかを疑うのも当然だろう。


とうに知っている人もいるだろうが、ファラデーの逸話もベンジャミン・フランクリンの逸話も、どちらも作り話、都市伝説である。
ファラデーの逸話についてはFACT CHECK: Michael Faraday 'Tax' Quoteベンジャミン・フランクリンの逸話についてはRedirect to Lockhaven.eduに根拠がないことが解説されている。いずれの逸話も当人の記録や信頼できる情報源に掲載されておらず、後世の創作と考えられている。


現代の問題について、何かの権威を借りようとこういう逸話を持ち出す際にはその話の信憑性や背景に注意が必要である。科学研究の意義を訴えるのにこのエピソードを持ち出すのは良いことだとは思えない。

*1:この話、偉大な科学者の言葉、後世の電気の重要性という前提がなければこんな説得力のない言葉はない。これらの作り話の中の科学者の言葉は、研究の意義について本当は何も語っていない空虚なものである。