周回遅れの終末ネタ・2029年小惑星衝突

Voice Of Russiaで2029年、地球に小惑星が衝突するという記事が掲載された。

http://japanese.ruvr.ru/2012_09_03/seikimatsu-2029/
世紀末の正確な日時が発表された。2029年4月13日グリニッジ標準時で午前4時36分。6万5000個の原子爆弾と同等のエネルギーを持つ、直径320メートル、重さ5000万トンの小惑星が融けながら月の軌道を横切り、時速4万5000キロの速さで地球へと突入する。



世紀末というよりは終末ではないかと思うが…。
この記事がまたいくつかのまとめサイトで扱われている。
しかし、この記事の内容は今となっては適切なものとは言えない。単純に言って周回遅れの内容なので、解説しておこう。


この記事に書かれている小惑星とは、アポフィスのことである。質量等の数字に違いはあるが、まず間違いない。
なぜわかるかと言うと、この小惑星が衝突する/しないというのは、過去に何度か報道されたから予測された年や日付から分かるのだ。この小惑星についてはWikipediaにも記載されている。


参考:wikipedia:アポフィス (小惑星)
衝突の危険性について99942 Apophis (2004 MN4)



2004年にこの小惑星が発見された後、同じ年にNASAが地球への衝突の可能性が高いことを発表した。そこで公表された衝突が予測される日付が2029年4月13日なのだ。
衝突する確率はその後の観測に基づいて何度か修正されて報じられ、2004年12月24日の2度目発表ではトリノスケール(地球近傍天体が地球に衝突する確率及び衝突した際の予測被害状況を表す尺度)が4にまで引き上げられた。この4という尺度は、接近距離が近く、天文学者が注意する必要があるレベルの一つで、小惑星としてこの数値が与えられるのは初のことだった。


参考:wikipedia:トリノスケール


その後の観測・再計算によってこの衝突の可能性は修正され、2029年には衝突しないこと、その後も衝突の可能性が低いことが公表されている。トリノスケールも観測結果を元に次第に引き下げられ、現在では0になっている。


しかしそんな観測や研究結果はさておいて、終末が好きな新興宗教やオカルト界隈は盛り上がった。
2005年7月19日にエジプト神話の闇と混沌を象徴する悪神に由来する「アポフィス」(99942 Apophis)という名称がつけられたことも拍車をかけた。この名前は悪神というだけでなく、「アポカリプス」(黙示)にも似ているからだ。
おかげでこの小惑星の衝突の可能性がない、低いと報じられた後も、世界の終末と関連づけられて様々なオカルト分野で利用されることとなった。オカルト分野では2012年終末説というものがあるが、それがあまりに近すぎて将来のネタも必要だという事情もあるのだろう。
今回の報道は別にオカルトというわけではないが、情報の内容が古く、あてにならない。
なお、この小惑星が地球に接近する年は他にもあり、早くもそちらの年を人類滅亡と関連づけている気の早い人間もいる(例えば2036年)。アポフィス含め、地球に近い天体について衝突可能性を含めて今後も研究や観測は行われるが、それとは全く別の領域で小惑星が滅亡論の種に使われ続けるのは間違いないだろう。