一般人はまず知らないナイフショーについて教える

ここで何度か話題にしている「ナイフショー」について解説しよう。
世間のほとんどの人は、どういうイベントなのか知らないだろう。
ナイフショーとは、物凄く単純化するとナイフの展示即売会である。

ナイフショーの会場。2010年関アウトドアナイフショーで撮影

出展者

ナイフショーに出展するのは

・カスタムナイフメーカー(個人でナイフを製造する。ハンドメイド中心)
・ナイフファクトリー(工場でナイフを量産する企業。市販のナイフはほぼファクトリー製。)
・ナイフショップ(ナイフ販売店やカスタムナイフ作成用の工具や砥石などナイフメンテナンス用品を扱う業者も含む)

の3者で、ナイフショーの出展者の9割以上はナイフメーカーである。この他、コレクターやナイフに関連する出版社などが出展することがある。要するにナイフショーはほとんどカスタムナイフのための展示即売会である。

カスタムナイフ

カスタムナイフの定義にはいくつかあるが、個人規模の工房でハンドメイド中心で作っているものはカスタムナイフと言っていいだろう。例外が多いが、あまり気にする必要はない。
カスタムナイフではデザインも量産向きというよりハンドメイド向きのものが中心になる。多くの場合、メーカーがデザインも行っているが、他人のデザインを基にする人や注文主のデザインを受ける人、現在ではあまり作られていないクラシックなナイフを基にする人など、様々だ。
製法について言えば、ナイフ用材料として販売されている材料―ブレードになる鋼材、ハンドルになるハンドル材―を切削加工して作る人がほとんどだ。ナイフを収納するシース(鞘)、ケースの類も皮革・木材・人工素材などを加工して自作する。
どういうわけか、一般の人はナイフを作ると聞いて赤く熱した鉄を金槌で叩くイメージを持つ人がかなりいる。そういう製法―鍛造と言う―をやるメーカーも一部いるが、それはかなり限られた少数の例だ。ナイフメーカーが刃体を作る作業の中心は、工作機械・工具を使っての切断と研削である。
価格について言えば、安価なものから高額のものまで幅広くある。5万円〜10万円程度のものはザラにあり、これをはるかに上回るものも多く存在する。大抵の場合、素材の価格と加工にかかる手間で高いものになっている。この価格の高さと製造数が少ないことから、カスタムナイフは通常の刃物店等にはあまりなく、限られたナイフ専門店で少数しか扱われない。だからナイフ愛好家はメーカーと直接交渉してナイフを注文することも多い。ただし、メーカーが注文を多く抱えていることがあって、注文してから出来上がるまでにかなりの時間を要することがある。1年以内の人もいれば、5年、10年とかかる人もいるのだ。
なお、一般の人は高いナイフ=切れるナイフと思いがちだが、必ずしもそういう訳ではない。カスタムナイフは一般に良い材料を使っており、並外れた切れ味のものもあるが、カスタムナイフの価格はデザイン、手間、素材といった要素が絡み合っていて、実用性の高さだけが価格を決めていない。

ショーの意義

上述したように見る機会も入手する機会も限られているカスタムナイフを実際に手に取り、購入する機会があるのがナイフショーのメリットだ。実際にメーカーと話し合い、カスタムナイフに対する世界を広げることもできる。
実際に注文するかどうかはさておき、メーカーとのコミュニケーションができることと実物に触れられることがナイフショーの意義だと言える。
ショーはナイフと関わりの深い団体や個人が主催するものであり、一種のPRの場でもあるのだ。

ショーの開催情報

ナイフショーの情報は、雑誌『ナイフマガジン』に掲載されているものが最も網羅されている。ネットではナイフ団体(ジャパンナイフギルド)のスケジュール(http://www.jkg.jp/schedule.htm)やナイフメーカー、ショップのWebサイト・ブログ、あるいは主催者の公式サイトに情報が載っている。

最後に

日本のナイフショーはとにかく規模が小さい。また、自分が雑誌やネットで知ったメーカーが必ず出展するとは限らない(ショーの告知で参加者の情報を事前に知ることはできる)。クオリティ面からファクトリーナイフほどの満足を得られない物まである。あなたが望むナイフがあるという保証はできない。それでもナイフショーでしか得られない体験や出会いはあるもので、できればもっと多くの人に参加してほしい。