システマで鞭を使うということは知られていない

あまり知られていないことだが、ロシア武術のシステマでは鞭を使う技術がある。
ステマで使う鞭は一般に知られている鞭ではなく、独特の形状のロシアのコサック鞭(ナガイカともいう)だ。
皮を編んで作られているもので、一般にサーカスなどで使われる鞭よりも短く太いものがほとんどだ。

下はコサック鞭を解説したテレビ番組。

コサック鞭は馬のための道具というより武器として作られているものが多い。伝承ではコサック鞭は少年に最初に与えられる武器であり、コサック騎兵のもう一つの武器であるコサック・サーベル(シャシュカ)と同様に重要な武器だ。
コサック鞭は内部紛争や非武装の相手に対する武器、治安目的で使われた。コサック鞭は時代・地域によって違いがあり、例えばドン川流域のドン・コサックはかつて木製の柄になめしていない生の牛革の鞭がついたものを使ったという*1。ドン・コサック式の鞭は革を編んだ鞭と木の柄をリングで連結したもので、現在はなめした革で作られている。一方、システマで使うコサック鞭はクバン・コサック式の鞭だ。
現在手に入るコサック鞭はほとんどがロシア連邦内の個人メーカーによるもので、システマの練習者はシステマ団体が販売するものを購入している。


コサック鞭メーカーのサイト http://nagayki-pleti.livejournal.com/


下の動画はダンスの動画。冒頭でコサック鞭、その後コサック・サーベルを使っていて、両者の技法が同じである一例だ。



ステマにおけるコサック鞭は、伝統的なコサックの戦闘術というよりシステマの身体技術を学ぶツールの一つであり、鞭も単なる武器ではなく、鞭を使うことで素手ではわかりにくい反応や感覚といったものを磨いている練習が多い。

しかし武器として全く使わないというわけではなく、システマの技術を踏まえた武器としての用法の練習も行われている。


ステマ・モスクワが販売する動画(予告あり) Combat use of whip


単に相手を打つだけではなく、巻きつけたり押えたりして相手をコントロールしている点が特徴的。相手を打つ場合も闇雲に打つのではなく自然でリラックスした動きや相手との関係性の中で適切な攻撃が生じるようにしている。

また、民族色(コサック騎兵の伝統色)が強いシステマ団体であるシステマ・シベリアン・コサックではコサック鞭の練習がかなり行われているようだ。