面白いニュースがないので、ここで一つ私が中学生時代に所属していた部活動の話を書いてみよう。
もうかなり昔の話で、今書いておかないとそのうち忘れてしまいそうだというのも書く理由にある。
まず、前提として私が住んでいた福島県のある地域について書いておかなければならない。
当時私が住んでいたところは新興住宅地だったが、その実状はかなりの田舎であった。80年代になっても舗装されていない道路があり(私道ではない)、周辺に野原や田畑が多かった。特に広大な面積を占めていたのは水田とリンゴ畑だ。家の一番近くにあったスーパーは農協経営の店舗である。小学校、中学校があったのも同じような土地で、だからこそこれから書くような部活動が成り立ったのだと思う。
タイトルに書いたように私は生物部に所属していた。
全学年合わせて10人もいない部だったが、男女とも活発な生徒から大人しい生徒まで多様で、文化部としても変わった雰囲気だった。
生物全般に興味があってあまり深い考えもなく入ったのだが、そこで経験した活動は生物部という名前から想像するものとは違っていた。
何しろ春先の活動は、学校の裏山に登って山菜を採り、理科室で天ぷらにして食べることだった。
その後も学校近くの裏山や小川での採集と理科室での調理・加工というのが主な活動内容だった。これはもっぱら顧問のS先生の経験と趣味によるものだ。
S先生は理科の先生だったが、半農半教師とでも言うべき人で、山間部に田畑を持っており、学校にはもっぱら農作業用の軽トラックで通勤していた。
S先生の元での活動について、覚えている限りの内容を羅列してみよう。
・山菜採り。裏山に生えている山野草を見ながら食べられる山菜や毒草の知識を教わり、食用に適したものを採集。理科室に持ち帰って先生が持ち込んだ調理器具で部員が天ぷらに。
・木の実採り。桑の実とキイチゴ(モミジイチゴ)がある場所を教わり、採集して食べる。福島では養蚕が盛んで、桑畑に近い裏山の裾には人の手が入っていない桑の木が多かった。
・魚採り。学校近くの小川に先生の軽トラックで移動し、網で魚を採る。理科室でしばらく泥出しの後、唐揚げに。
・昆虫採集と標本作り。裏山で昆虫採集し、理科室で展翅。恐らく最も生物部の名前からくるイメージに合う活動。
・和紙作り。裏山で桑の木の枝を採集し、皮をはいで繊維を取り出し、ハガキ大の和紙を漉く。
・熊鍋。S先生が山の畑を荒らすツキノワグマを罠檻で捕殺。先生がある程度解体した部位を学校に持参し、理科室で部員がさらに細かく分けて調理。
・野鳥料理。S先生が空気銃で獲ったスズメ、キジバトなどの野鳥を部員がタレをつけて焼いて調理。野鳥料理は羽根むしりから始まる。
・蒸留酒造り。S先生の畑でとれたリンゴを使い、部員が理科室の器具で発酵・蒸留して酒を造る。もちろん皆で飲んだ。
こうした活動は準備・計画もあってそれぞれ一回で終わるというわけではない。
他に目的もなく山野を回ることもあり、様々な知識を学んだ。
こうした活動でアウトドアの知識や技術を教わり、ナイフの使い方や研ぎ方も教わった。私のナイフ趣味はこの部に起因する。
あの先生とあの土地があってこその活動内容だったことは間違いなく、恐らくS先生の退職後は生物部の活動内容は大きく変わったに違いない。
かつての記録はなく、形あるものとしてあの時代の生物部の活動の痕跡は残っていない。