栄養学部の大学図書館司書が料理技術の情報について書く

管理栄養士養成課程のある大学図書館で働いた経験と自分の経験から、料理の技術の情報について書いておく。

初心者向けには向かない情報

管理栄養士を目指す学生は、授業の都合で大学で自ら料理を作る機会もある。ほとんど料理の経験がない学生もいて、苦労する学生も結構いる。
学生は多くの場合自分達で考える献立の参考にするため料理本大学図書館で借りるのだが、高血圧のための食事の本などでは料理過程の説明が不十分なものも多い。このため図書館司書が料理本に関する質問を受けることもある。
管理栄養士向けの本に限らず、いわゆるレシピとして本やネットに掲載されているものは情報をかなり削っていて、知識・経験のある人向きであるものがほとんどだ。
例えて言うと、武術の本に出ている型の写真と説明を見てその型をやってみることができる未経験者がほとんどいないようなものだ。
また、ネットのレシピは簡単さを売りにしているものでも実際は簡単ではないというものがある。
例えばクックパッドでは次のようにタイトル・説明と実質があっていないことはザラにある。

  • 「材料3つで」→3つ以上材料を使っている。
  • 「3ステップで」→1ステップに複数の手順が入っている・材料のカットは含めない、など。

本当に簡単なものもあるが、簡単を売りにしているレシピは必ずしも初心者向けではないという点には注意が必要だ。

料理番組視聴の勧め

料理に慣れていない人にまず勧めるのは、調理の簡単な基礎技術を解説した本と料理の映像資料である。
特に明確な目的(特定の料理を作りたい等)がなく料理に慣れたい場合にはテレビの料理番組が良い。料理本、レシピでは飛ばされがちな手順が目に見えてわかるし、手順の意味を説明するものも多い。
NHK教育テレビEテレ)の「きょうの料理ビギナーズ」は火加減や調味料の使い方の説明がわかりやすく、特にお勧めだ。
私の場合、調理技術について知るために様々な料理番組を学生の頃によく見ていた。ただし、料理番組のレシピに挑戦したことは全くない。調味料や食材の都合で全く同じものを作るのは効率が悪いからだ。必要なのは番組に出てくる調理技術の知識であってレシピではなかった。また、失敗した料理のリカバーについても料理番組で知った。
なお、YouTubeニコニコ動画の料理動画は手順・説明をかなり省いた初心者向けではないものが多いので要注意。

初心者向け料理本について

所蔵している本からいくつかお勧めの本を紹介しよう。

お料理一年生 (ベターホーム双書)

お料理一年生 (ベターホーム双書)

古い本なので新しい器具や食材については書いていないが、調理器具、食器の扱いから簡単なレシピ、片付けまで掲載されている。調理の基本技術解説の本。野菜の選び方とか水溶き片栗粉がどういうものかわからない、といったレシピには載っていない初歩的な知識が必要な人向け。自分で料理とそのための買い物をしたことがないような人、台所慣れしていない人に適している。簡単なレシピあり。
調理に必要なデータがわかる 下ごしらえと調理のコツ 便利帳

調理に必要なデータがわかる 下ごしらえと調理のコツ 便利帳

食材の下ごしらえ、調理技術の解説本で、食材の正味量や廃棄率、カロリーといった数値も載っている。一般の人には必ずしも必要ない情報もあるが、基本的な調理技術について知るには良い本。初心者ではなくなった後も長く使える。
子どもがつくる旬の料理〈1〉春・夏―素材を感じる「食育」レシピ

子どもがつくる旬の料理〈1〉春・夏―素材を感じる「食育」レシピ

子どもがつくる旬の料理(2) 秋・冬 素材を感じる「食育」レシピ

子どもがつくる旬の料理(2) 秋・冬 素材を感じる「食育」レシピ

子供向けの料理本
子供用だと思ってあなどってはいけない。大人向けと変わらない料理の数々が作れるお勧め本。しかも普通の料理本では省略されがちな基礎的なコツ、手順の部分をよく解説している。レシピそのものは季節感重視であり、定番料理を作れるようになりたい人向けではない点に注意。
一般家庭でよく出てくるような定番料理がある本でお勧めは
料理のきほん練習帳

料理のきほん練習帳

どちらも普通のレシピ本でフォローしていない基礎的かつ重要な知識が得られる。


慣れないうちは、料理本を選ぶ際は「過程、情報がなるべく省略されていない」「調味料の分量がわかりやすい(グラム単位より大さじ・小さじ)」「火加減や水の分量がちゃんと載っている」を目安に選ぶと失敗する可能性が減る。