小説投稿サイトの登場武術を調べての雑感

今年夏から武術の一般的なイメージや知名度を知る一環として、ネットの小説投稿サイトを調べている。
「小説家になろう」登場武術ランキング2015 - 火薬と鋼
「ハーメルン」登場武術ランキング2015と「小説家になろう」との比較 - 火薬と鋼
「ベリーズカフェ」登場武術ランキング2015 - 火薬と鋼
上記以外の投稿サイトも確認しており、だいたい10以上のサイトを調べた。
もともとは何か数字を出したいわけではなく、武術のイメージについて知っておきたかったのだ。
何しろ何年も武術の本・雑誌を読み、経験者の話を聞き、自分も体験し続けていると知識経験がない人との認識のギャップが大きい。
投稿小説は偏ったサンプルだが、それでも様々な例を知ることができる。
いくつか面白いと思ったことを書いてみよう。前に書いた内容と一部被る。

  • 免許皆伝、という言葉は登場人物の強さを示すものとして幅広く使われる。
    • そういう段階がない武術でも使われる。魔法などでも免許皆伝と書かれている。
      • 例えば「柔道の免許皆伝」「システマの免許皆伝」という例もあった。
    • 免許皆伝は「マスターした」「習得した」という意味を示す一般的な言葉として使われていると思っていい。
    • 技能の段階を示す様々な言葉が知られていないのは当然と考えていたが、特定の段位・伝位が非常に幅広く使われているのは新鮮だった。
    • 西洋武術や中国武術について黒帯とか免許皆伝とする作品はかなりある。もっとも段位システムは便利なので現実でも日本以外の武術で採用している例はある。
  • 段位・伝位と同様に登場人物の技術程度を示すものとして「大会」がある。全国大会優勝といった経歴が箔付けになっているものだ。
    • 現実では大会や試合が存在しない武術でも小説では高校大会、全国大会があったりする。部活動でやるスポーツのイメージが強いのだろう。
    • なお、演武しかない大会は想定されていない。
  • 10〜20代で多数の武術を経験・習得しているキャラクターの例が結構あるのだが、こういうキャラクター特性は何か原型があるのだろうか。
    • 複数の武術を組み合わせて自分独自の武術にしているというパターンもある。
    • そういった数多くの武術を羅列する際にややマイナーな武術も出てくる。中国武術やシステマもその一例。
  • 色々な武術キーワードで検索し、作品の概要を読むと武術のイメージというのがおぼろげに見えてくる。
    • ヒット数が多い武術は、部活・趣味から喧嘩・本格的な戦闘まで幅広い状況で登場する。
      • 空手はその典型の一つ。あらゆる傾向の作品で使われる。ただし現実の流派ではない創作流派であることが多い。
    • 逆にヒット数が少ない武術(実在する剣術・柔術、各国の武術等)は喧嘩・戦闘専用で、練習も少人数や一対一での指導と相場が決まっている。現実と違って練習者を増やさない閉鎖的な練習環境が設定されていることも多い。
      • こうした武術は女性向けの小説サイトではほとんど登場しない。
    • 日本の伝統的な武術(剣術や柔術)は家族・親族によって幼少時代から家の道場で学ぶものがほとんどである。要するに日本の古い武術は特別で閉鎖的なものとして扱われている。
    • あるいはシステマならスペツナズ隊員だったとか、元隊員から個人的に習ったといったパターンである。
    • 練習環境や指導者について説明がない作品もある。既に習得している設定だとそうなりやすい。
  • ステマの登場作品の少なさについて
    • 調査した全ての小説サイトでシステマは登場件数が少ない。特に女性向けではほぼ出てこない。
    • 作品の数や人気を見る限り、ネット小説でシステマの知識を得る人はほとんどいないと思っていいだろう。
    • もっとも、全国的に広まっている武道や競技・興行として成り立っている格闘技以外は大体どれも件数は少なく、差は小さい。
    • 軍隊絡みの格闘技としては他と比べると現実の説明や技術が小説に盛り込まれているほうである。
      • ほとんどの軍隊格闘技は正確な説明が少ないのだ。
      • 例えばマーシャルアーツを軍隊格闘技の名前にしたりCQCを軍隊格闘技の一流派の名前として扱っていたりと誤解・間違いがある。
    • ステマに限らず、軍や警察と関わりが深い各種格闘技についての創作者向けの資料はもっと世間にあったほうがいいかもしれない。