システマのコネクトと『ツマヌダ格闘街』の考察

先日の漫画の中のロシア武術システマ 『ツマヌダ格闘街』追加2015年11月号分 - 火薬と鋼に登場したコネクトの話について考えてみた。
なお、システマの練習について:脱力その後 - 火薬と鋼の話ともちょっと関連する。
限られた情報からの考察なので、かなり遊びというか想像が多い。そもそも漫画では描写の特性や面白さの都合上、現実とは様々な違いがあるのは当然なので、漫画にあわせた一種の制限つきの思考実験のように考えていく。あまり真に受けないように。
ステマでは相手とつながり、相手をコントロールすることをコネクトと言う。
分かりやすい例では練習相手に自分の手首をつかんで押さえてもらう。手を引きはがすのではなく腕力で強引に動かすのでもなく、リラックスした状態の繊細な動きで相手の力み・緊張を辿るようにアクセスして動かし、相手を制御する。多くの場合、相手のバランス、重心をコントロールしたり、相手をより緊張させたり、相手の動きを自分の思う方向に仕向けたりする。
こうした練習では接触によって相手の緊張を操作するが、接触しない状態からコネクトは始まっている。
離れた状態でも相手に影響を及ぼす関係性を作ることはしばしばコネクトとされる。
コネクトも脱力と深く関わっており、自分が緊張しているか、相手が脱力しているとコネクトは困難になる。


さて、漫画『ツマヌダ格闘街』のように肘の動きを断てばコネクトを切ることができるだろうか?
「左肱切断によってコネクトできなくなるか」「コネクトできなくなったとしてその後の動きに対処できなくなるか」という2点が気になる。後者については、実際にはコネクトを切って有利になるとは限らないが、そこまで作中で描写すると煩瑣になる話なので、とりあえず考えないことにしておく。
左肱切断については肘を動かさないということだけ説明されており、それなら本来はコネクトすることが可能である。ただし、脱力もしているとか、作中で説明されていない他の理由でコネクトが難しくなることは考えられる。
整理すると以下のように考えられる。

  • イリヤの動きは当初から作戦通りであったことが伺える。バウワンに組み付き、投げようとするとコネクトされて投げられる。そこから制圧されないようにローリングで逃げる。それによって作戦上有利な位置に誘導する。最後は示現流の応用でコネクトを断ち、相手を突いてカイン王子のところまで飛ばす。これは相手のバウワンがイリヤの投げに付き合うからこそ成立した作戦で、バウワンの性格まで計算に入れた高度ながらも不確実な策と考えられる。
    • 作戦通りにいかなかったらどうしていたのだろう。
  • バウワンがコネクトして組む・投げることがあらかじめ想定できており、イリヤがそれに対して2つの対処法(ローリングと左肱切断)を持っているということが作戦の要である。逆に言うとこれらのポイントが成り立たなければ作戦はうまくいかない。
    • このシステマ対策は恐らく事前のシステマの練習で確認したのだろう。システマを指導したカインの技量によっては検証は十分できなかった可能性もあるが、それは分からない。
  • 投げられてからローリングで離れてコネクトから脱するのは、状況や相手との技量差によっては可能である。
  • 左肱切断からの対応について考えるのは難しい。今回の描写では肘の動きを断つことでコネクトさせていないように読める。この理由では本来ならコネクトさせないようにすることはできない。しかし描写されていない理由で成立する可能性は考えられる。
  • まとめ。そうねえ。「示現流は怖い」ということしかないんじゃないの。*1