『刃牙道』本部以蔵の不幸

マンガの話は時間がある時に書かないと手のひらの水のように簡単に流れ落ちていく。
たまには板垣恵介刃牙道』の話を書いておこう。

  • ここ何年かで徳川みっちゃんは作者の代弁者としての顔を強く持つようになった。
    • 烈と武蔵を戦わせておいて、死ぬと嘆く。でもまた懲りずに次の戦いを求める。これは作者の感情ではないか。
    • 今週の「あの本部以蔵なる人物の正体をまるで理解っていない!」も作者の叫びではないかと思っている。
    • もちろん作者にも思惑、想定といったものはあるはずだが、平気で展開に任せて暴走するし。
  • ところで『グラップラー刃牙』で初登場時の本部が独歩に対して「今の貴様なら一分以内に殺せる」と言ったのも、実は武器を隠し持っていたからこその自信と考えると納得できるかもしれない。
    • 最も、公園での勇次郎との戦いでは素手だったわけだが。
  • 本部は強キャラとして登場したわけだが、その後の描写は他の強いキャラとは一線を隔している。
  • 私が見るに本部は努力と工夫の人である。
    • 努力型であることは、弟子の花田と自身との比較、勇次郎に負けた後の対打撃練習(回想)、解説で見せる知識、『刃牙道』での山籠もりから伺える。
    • ガイアに硫酸カプセルを教えた点からも、既存の武術の武器以外の工夫もしていることが想像できる。
  • そのわりにその努力や工夫がうまく報われる機会は限られており、小物感が強い。
    • 花田戦を前にした刃牙の相手をしたり、妙に面倒見も良い。
  • しかしこうした人間味のある描写がうまく本部の魅力になったかというと、なっていないのである。
  • 本部の人間味は、本部の強さや他の良さを損なう形で主に出ていたからである。
    • 公園の戦いで勇次郎の打撃に対処できた時の喜びっぷりとか。
    • 金竜山を相手にした時もそう。こちらの場合は知識不足を露呈したので猶更キャラクターを下げた。
    • 柳龍光を圧倒した後、勇次郎を前にしての動揺っぷりとか。
  • この辺の描写は本部というキャラクターの一貫性を損なうものでもある。
    • 花山が梢江に蹴られて痛がったのとは訳が違うのだ。
  • 今回の話が順当に行ってもどこかの段階でまたキャラクターを落とすようなことになるのではないかと危惧している。