なぜ図書館業務委託・受託会社に専門知識が必要なのか

先日、東京都立の学校図書館・図書室の委託の実態についての記事が注目されていた。
東京都立高校・学校図書館(図書室)、業務委託のおぞましい実態: 公共図書館(公務員)・国立大学図書館の司書になる!
なぜ図書館業務を扱わないような業者だと問題視されるのか、分からない人もいると思う。実際に図書館業務に携わるパートスタッフは司書資格があり、図書館勤務経験があるのだから問題ないのではないか、と。
しかし受託会社にも専門知識が求められるのは理由がある。
私の経験から、受託会社に図書館業務の経験や知識が必要とされる事情を書いてみよう。

  • 業務把握の問題

図書館業務をちゃんと理解していない受託会社は、仕様の理解や金額の見積もりを適切に行うことができず、非常に安い金額で受託してしまうことがある。この結果、「想定していた業務と違う」「人件費を削って帳尻を合わせた結果、パートスタッフが長続きしない」などの問題が発生し、最悪の場合は年度途中で他の業者が引き継ぐことになったり、パートスタッフがサービス残業させられたりする。
そもそも図書館と関わりがないような会社が公立図書館・公立学校図書室業務を受託できるのは、自治体とのつながりが深い・金額が安いといった理由であり、高い業務遂行能力があるからではない。

  • 業務のフォローの問題

パートスタッフのスキルが十分ではない、あるいはパートスタッフの欠勤や交代などにより、受託会社の社員が業務に関与せざるをえない状況が発生することがある。
その場合、図書館の経験が少ない会社ほど図書館サービスの質は低下する。特に引き継ぎ時のトラブルはよくある。「前任者が溜め込んで処理していなかった業務があることが数ヵ月後に明らかになった」「引継ぎなしで後任のパートに丸投げ」「パートが休みの際に何もできない人が代替で入る」「定例会議でパートや発注者が受託会社の人にかなり初歩的なことから説明しなければならない」*1といった話は無数にある。

  • 人材の理解の問題

図書館業務の知識・経験がない会社は、採用するパートスタッフの能力を適切に把握することができず、ただ応募してきた人を投入するだけということがある。
これは上述の問題とあいまって図書館サービスの低下や適切な報酬の設定ができないといった結果をもたらす。

  • ただし

上に挙げた話は図書館委託を専門的にやってきた会社でも結構起きている問題である。この業界でよく知られた会社も過去に色々やらかしてきた。専門知識がない会社だと特にひどいことになるという程度問題の話だ。

*1:例:「図書館のコピーって制限があるんですか!」と驚く受託会社社員