護身は簡単だという人は一定数いる

最近、複数の別の事件に関連して護身術に関する話題をいくつか見ることがあった。
そうした話で気になったのは、護身は容易なものだと考えている人が少なからずいるということだ。
護身術と武術については昨年2月に書いた→護身と武術の話に関するメモ - 火薬と鋼


自分の経験でも、
「格闘技・武道経験者から護身に有効な技をいくつか教わればいざという時に使える」
「格闘技・武道を練習していると護身は簡単に達成できる」
という認識の人がいて、会話でそういう話題を出してくることがある。
このブログでよく調べているネット小説でもこれと似たような認識の例があって、武術を知っている人にちょっと教わった・かじった程度で暴力に対処している話は結構ある。まあ、これはフィクションだからそういう手軽な話があっても必ずしも問題というわけではないが。
しかし現実の犯罪に対処するリスクを考えると危険を避ける様々な心得や対人コミュニケーション、メンタリティといった前提がかなり重要で、それほど簡単な話ではない。
特に体格・腕力の差を覆す技を知っていれば犯罪に容易に対処できるという認識はかなり危うい。
全く練習したことがない技―特に急所をピンポイントで攻撃しなければならないような技を実行するのは肉体的にも心理的にも難しいからだ。
昨年、次のようなまとめを見た。護身に有効な技として指折りが紹介されている。
頭突き、金的etc…下手な護身術は失敗する!?より実践的な技が話題に。 - Togetter
しかし襲ってくる相手の指を折れるようにつかめる人間が世の中にどれだけいるだろう。
格闘技経験者でも難しく、これを実行できるほど技術と度胸がある人は他のもっとやりやすい技を使えるのではないか。親指なら比較的掴みやすいが、それにしてもいざという時に実行するのはそう簡単ではないだろう。
「知らないよりましだ」と思う人がいるかもしれないが、できなかった時の焦りや恐怖を考えると、この種の実行が難しい技に対する過剰な期待があるのも問題だと思う。もっとやりやすい攻撃にしても、突発的な状況で攻撃を実行できるメンタルやフィジカル、適切な技術なしではかなり困難だ。走って逃げれば良いというのも、相手の足が速ければ有効ではなく、状況によっては逃げられない。身を守るには総合的なリスクマネジメントが欠かせない。
しかし護身というとかなり限定的な状況、それも被害者の反撃・逃走が容易なものとしてイメージされがちなのかもしれない。