ネット小説の創作流派のネーミングと一刀流について

昨日の「小説家になろう」登場武術ランキング2016について、Twitterで六葉(@h_rokuyou)さんから次のような反応があった。


ちょうどこの件について書こうと思っていたので、書いておこう。

  • まず前提として、ネット小説では現実の流派より作者が創作したオリジナルの流派を出す例がほとんどである。
    • 剣術、空手、拳法、古武術柔術など様々な創作流派がある。
    • ネット小説で実在の流派(特に剣術流派)が登場する小説は、江戸時代を舞台とした時代小説であることが多い。
  • 創作流派の名前は漫画やライトノベルに登場する創作流派と同じで、漢字でかっこいい名前と相場が決まっている。「なろう」で人気の異世界もの・ファンタジーものに登場する流派でもこれは変わらない。
  • 先にランキングで書いたように創作流派にはどういうわけか、「〜一刀流」と名付けられているものがいくつも見られる。
    • 小説家になろう」の一刀流のうち、実在する一刀流は半分もないだろう。多くは創作の「〜一刀流」で、しかも実在の一刀流とは設定上もつながりがない。
    • どうも「一刀流」というのは伝系によらず流派名に広く使われる名称と認識されているようだ。
    • これは「なろう」に限らず他の小説投稿サイトでも同じだ。実在の一刀流が主流なのは女性向けの「ベリーズカフェ」くらいである。
      • ベリーズカフェ」では一刀流のような剣術がほぼ時代小説にしか登場しないため。
    • 「二刀流」と同じように、一本の刀を使う=一刀流としている用例もある。一刀流という名称が創作流派名によく使われるのも、実在の剣術流派の一刀流のイメージはなく、一本の刀を使う流派なら一刀流と名付けていいくらいの認識が根底にあるのかもしれない。
  • この種の実在流派の名前を基にした創作流派は他流ではあまり見ない。
    • 例えば「なろう」で創作の「〜新陰流」は3件しか確認できなかった。
    • ステマも実在のシステマを元に改良された設定のオリジナルのシステマの登場例があるが、極めて少数である。
    • 既存の流派を改めたり他流と組み合わせたりして創作流派の起源として設定している小説はそもそも少ないのだ。
  • 書く側にとっての扱いやすさから考えて、以上のような傾向は今後もそうそう変わらないと思われる。