創作の中での軍隊格闘技の考証と可能性について

ネット小説の武術の段位や練習環境で気になったこと - 火薬と鋼の続き。

  • 創作によく登場する軍隊格闘技の条件や創作の上での扱いやすさについて書いておく。
  • 軍隊格闘技の多くは、軍の訓練課程であり、軍内部でだけ教えられている。
    • ほとんどの人がイメージするのもこのパターンだろう。
    • アメリ海兵隊のMarine Corps Martial Arts Program(MCMAP)やアメリカ陸軍特殊部隊のSpecial Operations Combatives Program(SOCP)が典型的な例。
    • こうした軍の訓練課程としての格闘技は、民間人や他の軍の人間が学ぶ機会は極めて少ない。
      • 例外もあって、合同訓練などで他国の兵士が部分的に学ぶことはある。
    • だから創作に登場する場合、使い手は軍に所属していたか、あるいは関係者から学んだかでないと不自然だ。
    • そして、こうした訓練課程としての格闘技は、兵士としての訓練・経験がないと兵士同様の強さを得られないと思っていい。仮に民間人が軍隊格闘技だけを学ぶ機会があったとしても兵士と同じ身体能力、精神力、経験、練習環境があるわけではない。
      • 東大で使われている教科書のうちの一冊で勉強しただけで東大生と同じ頭脳になるわけではないようなものだ。
  • もう一つのパターンは、民間で教えられている軍隊格闘技だ。
    • 実は兵士が学ぶ技術は軍隊内部のものだけとは限らない。民間企業や外部団体から訓練を受けることも多い。格闘・射撃・アウトドア技術・医療技術など多くの訓練で民間の力を使っている。
    • 格闘技の場合、上述した軍の訓練課程以外に別の格闘技を学ぶことがある。
    • クラヴマガやシステマはこの典型的な例。こうした格闘技は軍人だけでなく民間人も習うことができる。
    • こうした指導を行う企業・団体の指導者は軍人・元軍人が多い。
    • また軍の訓練課程を基にしていたり相互に参考にしたりと技術・知識面で軍との関わりが深い。
    • 指導内容は色々で、ところによって民間人向けと軍人向けで指導内容がきっちり分かれているところと曖昧なところがある。
    • こういった格闘技は、どんな立場の人間が学んでいてもおかしくない。
  • 時代による変化について。
    • どのような格闘技も時代とともに変化する。
    • 当然軍隊格闘技も変化しており、同じ名前の軍隊格闘技でも訓練内容、テクニックが変わっていることもある。
    • 時代による変化は時にはっきりと出るので、変化を考えずに創作に出すとおかしなことになる(こともある)。
    • 例えば第二次世界大戦時のままのフェアバーン・システムを現在のもののように登場させるのは無理がある。
    • 最も、昔の技術だから絶対使われないとは限らないし、話の中での扱い方によっては全く問題ない。
  • こういう知識や考証は、作品の傾向、内容によっては全く必要ないが、軍隊格闘技が登場する小説はしばしば設定に凝った話が多く、格闘技の部分だけ間違いや抜け落ちがあると目立つ。