システマ練習者が説明する腕立て伏せ(プッシュアップ)のネガティブ動作

今日のシステマの練習の際に会話に出た腕立て伏せ(プッシュアップ)のネガティブ動作について解説しよう。
フィットネス、トレーニングとして腕立て伏せをやる人の参考にもなるかもしれない。


まず前提知識として、筋活動には、アイソメトリック、コンセントリック、エキセントリックの3種類がある。
アイソメトリック・コントラクション(等尺性収縮)は、筋が運動を伴わず、筋の長さが変わらない収縮を指す。動かない壁を押し続けるような動作、対象と拮抗状態にある時の筋活動だ。
コンセントリック・コントラクション(短縮性筋活動)は、筋が短くなる収縮を示すもの。
エキセントリック・コントラクション(伸張性筋活動)は、筋が伸ばされる収縮を示すものである。
このコンセントリック収縮の時の動きをポジティブ動作、ポジティブ・ムーブメントと呼び、エキセンリック収縮の時の動きをネガティブ動作、ネガティブ・ムーブメントという。
そしてプッシュアップの場合、上昇局面がコンセントリック、下降局面がエキセントリックである。


ステマではプッシュアップは身体感覚、呼吸、意識など多義的なトレーニングだが、単純に筋力不足や体重の問題で十分なプッシュアップが行えない練習者もいる。
その場合、膝をついて負荷を減らした状態でプッシュアップを行う方法が練習者にはよく知られている。
それ以外の方法として、上述のネガティブ動作のトレーニングを行う方法がある。
ネガティブ動作はポジティブ動作より高い負荷に耐えられるため、プッシュアップで苦しい人もやりやすい。また、膝をついて行うプッシュアップよりも下半身のトレーニングになる。
神経系の適応(EMG活動)もエキセントリック・トレーニングにおいて有意に大きいという研究結果もある(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8964735
ただし、エキセントリックだけのトレーニングでは、コンセントリック筋力やアイソメトリック筋力をそれらの独自のトレーニングだけを行うよりもさらに大きく向上させるということはないので、ある程度の筋力がある人は特定の局面だけ練習するのではなく組み合わせて練習するほうが良い。
また、プッシュアップの下降局面で単に力を抜きすぎて落ちているだけ人は、十分にコントロールできるようにネガティブ動作にも留意すべきである。エキセントリック動作をコントロールするのはシステマに求められる脱力しての動きにつながるが、コントロールしているのではない完全にふにゃふにゃに力を抜いてしまう状態はそうした練習にはならない。


注意点:
・プッシュアップの下降局面で最初に肩甲骨を大きく動かすと内転した状態で動かせなくなり、その後肘を曲げるという2つの動作を行うことになる。肩の柔軟な動きのためにはこの2段階式は避ける。肩甲骨を限界まで動かしてから肘を動かし始めるのではなく、肩甲骨に自由度を持たせて動作を行うこと。
・ネガティブ動作の練習は筋肉痛になりやすいので、トレーニングの回数や頻度に注意すること。
・システマの練習の場合、ある程度筋力がついて普通のシステマ式のプッシュアップができるようになればやることは変わっていくので、上述の練習方法をずっと使い続けるわけではない。