フィクションにおけるロシア武術システマの描写の可能性

ステマ多摩の岸インストラクターのツィートから。


ここで言及されたのは次のエントリだ。
ゲームでシステマを再現することについて - 火薬と鋼


この話題に関連して、フィクションでのシステマの描写について思うところを書いてみる。主に小説や漫画を想定している。

  • 上述の話について。
    • 他の格闘技も相手・状況に応じて動きが変わる。しかしシステマの場合は特に基本となる型から自由度を上げていくのではなく、最初から自由でただ原理・原則があるだけなので、状況にあった差異があるほうがシステマらしいのである。
  • 原則と描写について。
    • ステマの原則というのが厄介で、原則だけを文字で見ても戦い方をイメージできない。あれは練習者用の心得のようなものだからである。
    • よく知られているのは「呼吸を止めない」「リラックスを保つ」「背をまっすぐに保つ」「動きを止めない」の4原則で、これを引用するネット小説も複数存在する。
    • 「システマは読者に説明が必要な格闘技である」ということと「システマのイメージや技術を表現する言葉の少なさ」がこうした原則の紹介につながっている。
  • ステマらしい戦い方について。
    • これが一番難しい問題。
    • ステマらしい特徴的な戦い方、戦法というものを登場させようとして奇妙な説明をした作品がいくつもある。
      • 理屈にあわない不合理な戦い方をしている上にシステマの内容とも合わない戦い方をしていることさえある。
    • 「これを説明すれば/描けばシステマらしくなる」という定番の例はまだない。
    • これから生まれる作品のシステマの説明や描写が今後のスタンダードになる可能性もあるだろう。
  • 観察と想像。
    • ステマの動画や文章を作者が把握した上で合理的に整理されていれば、少なくともフィクションとしてはおかしなことにはならない。
    • しかし独自の解釈や想像を組み立てすぎると現実離れした、読者にも不可解な戦い方や原理を考え出してしまう。
    • フィクションに限らず、経験していないシステマの分析をネットで書いている人の失敗例はこのパターンである。
    • これまでのところ、うまくシステマを扱った作品は現実の練習やデモンストレーションで目に見える現象をちゃんと描写した作品である。
      • もちろん文章でも絵でも取捨選択や表現方法には作者の工夫が求められる。
    • これはシステマを体験した人・他の武術経験がある人でも案外できない。目の前で起きたことでもありのままを観察できず想像してしまう人は結構いる。想像のシステマが面白ければフィクションとしては成り立つが、そうした想像が面白い例は今のところ無い。
    • 観察力と想像力、どちらかの面で―あるいは両面で面白いフィクションのシステマが登場することを願う。