これから『江戸前の旬』を読む人に伝えておくべきこと

江戸前の旬 1

江戸前の旬 1

江戸前の旬』という寿司漫画を知っている人はどれだけいるだろうか。
週刊漫画ゴラク連載、九十九森原作、さとう輝劇画の長期連載漫画だ。
最近ネットで『江戸前の旬』をまとめて読み始めた人を見て、何か助言や注意を書いておいたほうがいいだろうかと迷った。
あれは雑誌で一話一話読むにはいいが、コミックをまとめて読むには必ずしも向いていない漫画だからだ。
ストーリーの結末だけでは解消できない唐突さ、理不尽さ・濃いキャラクター、説教部分が濃厚すぎる。
人気作品であるにも関わらずコミックの感想記事をあまり見ないのはそうした問題も一因ではないかと思っている。
漫画ゴラクや週刊漫画とかに載っている漫画には結構そういう作品があって、人に勧めにくい。
江戸前の旬』はその中でも特濃であるため、他誌の『解体屋ゲン』よりも通読に向いていない。
江戸前の旬』をこれからコミックで読む人にアドバイスを伝える。

  • 鹿野課長が出てくる話に注意

美味しんぼ』の富井副部長を上回る迷惑キャラ、鹿野課長が出てくる話は基本パターンがほぼ同じなので何パターンか読んだら後は仕入れと寿司の描写以外ちゃんと読む必要性が薄い。課長の不快さも強烈なので、連続で読んではいけない。今度鹿野課長の話だけまとめたコンビニコミックが出るが、読むのはかなりきついと思う。


  • 『大吾と旬』に要注意

主人公・旬の長年のライバルである大吾との対決のエピソードは大吾の人格と能力が向上することで次第に様相が変わっていって面白いのだが、さらに二人の対決だけを扱ったスピンオフが出た。

江戸前の旬?旬と大吾? 1

江戸前の旬?旬と大吾? 1

この話は本編の過去にあたり、初期型大吾よりさらに性格が悪い大吾が出てくるので要注意だ。不快さが半端ではない。普通なら善人になった元悪人キャラの過去話は悪さを加減するものだが、そういう調整は『江戸前の旬』にはない。
本編にしても、この二人の話は長い時間をかけて変わっていった関係が面白いのであって、まとめて一気に読んではいけない。
なお、『江戸前の旬』はどういうわけかスピンオフのほうが性格が悪い人間が登場するので(旬の父・鱒之介の青年時代を描いた『江戸前の旬 特別編 寿司魂』など)、本編できついと思った人は注意したほうがいい。

  • 唐突な回想と喜怒哀楽はじっくり読まない

客が何らかの経験や思惑で寿司に失望したり感激したりして語り出すのが定番だが、そういった感情をあらわにする場面や回想シーンは大抵唐突すぎるので慣れないなら読み飛ばしたほうが良い。『名探偵コナン』で殺人事件が多すぎることを気にしてはいけないのと同じで、ただの舞台装置である。そういった描写をじっくり読むと釈然としないところがあってストーリーのカタルシスでは解消できない。事態を収めるラストのイベント、説教や説明が微妙なこともあるので猶更だ。

  • 定番オチはしっかり読まなくて良い

ある程度読むとわかるが、旬たちが客の問題を解決する定番のストーリーでは似たオチが多い。これは時代劇のオチに近く、例えば必殺仕事人の中村主水が一件落着後に嫁姑にさいなまれるようなものだ。連続して同じようなオチを読むとつらくなるのでコミックであまり真面目に読んではいけない。私は雑誌連載時でも結構最後を読み飛ばしている。

  • 対決ものと恋愛ものはこじれるので注意

主要な人物が寿司で勝負したり、あるいは恋愛関係に及ぶ話がある。そうした話は数話にまたがることが多いが、大抵何かこじらせた人がいて事態をとことん悪化させるのでまともな料理漫画と同じような展開を期待してはいけない。しかもそのこじらせ方がこの漫画独特で、理不尽さを感じる。これも連続して読むとつらくなってくるので対決や恋愛だけまとめたコンビニコミックは読まないほうが良い。

  • 結局のところ沢山読まなければいいのでは

→慣れます。