- 最近チェックした「小説家になろう」を始めとする小説投稿サイトの格闘技・武道・武術が出てくる小説について少し書いておく。
- 発勁の概念が広がっている
- システマの登場作品
- 毎度おなじみシステマの話。
- 若くして多数の武術を修めた主人公の経験の一つとしての登場例が増えた。この2か月で公開された9作品のうち6作品がそのパターンだ。
- このパターンでは学んだ武術が主人公の戦い方に関わりがなく、単にカタログのように列挙しているだけということが多い。
- ほとんどの場合、「多数の武術を学んだ=数が多いほど強い」程の意味付けしかなく、経験の豊富さとか学習能力の高さといったありそうな特徴は描かれない。
- 一人の人物の設定に多数の武術経験を盛り込む作者は多いが、うまくキャラクターやストーリーに合うように扱える作者は限られるようだ。
- 10代半ばで10も20も武術を修めたという設定はギャグ・コメディ寄りの話でないと読者に受容されにくいのではないだろうか。今のところシステマを含む多数の武術を修めた設定で評価が高いのはシリアスな話ではなくコメディタッチの話だ。
- ネット小説の格闘技小説
- 流行のジャンルではないが格闘技の練習・試合やストリートファイトを主軸とした小説も一定数公開されている。
- 既存の格闘技漫画や格闘技小説の影響がかなり強く、しばしば相当前にどこかで見た展開や過去の格闘技業界の知識がベースになっている。
- 夢枕獏フォロワーが複数いる。
- 「強い古武術の使い手が登場」とか「ブラジリアン柔術がプロレスを圧倒」とか。今時ひねりもなくその展開は読んでいてつらい。
- 既存の格闘技漫画・格闘技小説を知らない読者にアピールできていればまだ良いのだが、評価やレビューを見るとそういう事はなさそうだ。
- もちろんそうした話ばかりではなくオリジナリティが高い作品もあって、そちらのほうが評価が良かったりするが、人気作品とまではいかない。
- 武術の修行環境について
- 先日書いたなぜそこで現代近接格闘技術を出したのかのように登場人物がDVD・本などのメディアで武術を習得する小説が一定数存在する。少数とは言えどれも無理がある設定なので記憶に残る。
- 古武術は例によって親が宗家とか道場主とかいったパターンが目立つ。これはかなり根強いパターンと思ってよさそうだ。
- ネット小説の「道場」イメージは創作の都合もあってか時代小説に出てくる剣術道場のようなイメージが定着していて、最近の作品でもそれは変わっていない。
- ネット小説では中国武術でもこの時代劇の剣術道場のイメージや用語が使われがち。「八極拳〇〇道場」とか普通に登場する。
- 中世ヨーロッパ風の世界観の西洋剣術の話で用語や形式が日本武道のスタイルというのも珍しくない。
- とは言えそういった用語を外すと分かりにくい語や分かりやすすぎて雰囲気にそぐわない語になってしまう危険性もある。最近読んだ中世ヨーロッパ風ファンタジー作品では「道場」「道着」「師範」などの用語が使われていたが、道場生を「受講生」と呼んでいてそこだけ現代的な感じだった。