システマのパンチを受ける練習について

先日のTBS「マツコの知らない世界」のシステマの説明や誤解について - 火薬と鋼に関連して、システマの動画でもよく見られるガードなしにパンチを受ける練習がどんなものか書いておく。練習の一環でただ立ってパンチを受けるのはシステマ練習者にはおなじみの光景だ。


パンチを受けることは、システマの打撃=ストライクの練習において、打つ側(ストライカー)、打たれる側(レシーバー)両方にとって意義がある。だから練習では交代して打ち合う。この練習に必要な説明や技術があり、単に我慢比べをしているわけではなく、経験の浅い練習者が一方的なしごきにあうのとも違う。また回避などのディフェンスの練習は別に存在する。
受ける練習について、インストラクターは次のように説明している。

「システマではまず最初にストライクの受け方を学び、自分自身の経験による、自身の身体の目覚めを通して、自らの内部で実際に何が起こっているかを知ることになります」 by ミカエル・リャブコ
「ストライクを自分に打ってもらわなくてはなりません。打ってもらうことで、身体で知識として様々なストライクを覚えるのです。楽しいものではないかもしれません。しかしこれがストライクからの恐怖を取り除く唯一の方法です」 by コンスタンチン・カマロフ
(『システマ・ストライク』より)

ロシアン武術が教える、非破壊の打撃術 システマ・ストライク

ロシアン武術が教える、非破壊の打撃術 システマ・ストライク

どうしてパンチを受ける練習をするのか。防御や回避だけ学ぶべきではないかと言う人もいるだろう。
こうした練習をする理由は、現実ではパンチを受けるからだ。絶対に攻撃を受けないということはない。
そして自分の恐怖心や緊張を知り、弱さを知ることで次第にリラックスによって克服することも知ることができる。
動き回りながら攻撃を受けるのと、動かず立っている姿勢で攻撃を受けるのでは違う。静的な状態でパンチを受けると、自分の恐怖心や緊張でダメージを受けることを知る。動きの中でパンチを受けると自分の弱さをごまかしてしまうこともできるが、動かず立って受けるとそうはいかない。
自然に立ってストライクを受ける場合もただ甘んじて受けているわけではなく、呼吸によってリアクションを行っている。恐怖心があると呼吸や呼吸が生む内部の僅かな動きを止めてしまう。
リラックスと呼吸によって受けることを覚えていくと、相手のパンチから受けるダメージは減っていく。練習を重ねても恐怖心がなくなるわけではないが、恐怖心が増大して動けなくなったり呼吸できなくなったりすることはなくなっていく。
私がシステマの練習を始めて間もない頃、立ち木を背にした相手に連続してパンチを打つ/受たれる練習をしたことがある。
その時は全くリラックスできておらず、力みで受けようとしてしまった。結果、パンチを受けた部分はあざだらけになった。
今ではそうしたことはなく、パンチで受ける痛みも軽減できる。
相手のストライクの質によっては対処は難しいし自分も恐怖心があるので完璧とはいかないが、練習をした分改善している。
静的な状態でストライクを受けられるようになっていくことは、動的な状態のリラックスにもつながるし、自分のストライクが相手に与える影響を理解することにもつながっている。