ネット小説に登場するロシア武術システマの気になるところ

個人的にロシア武術システマが登場するネット小説を読んで記録していて、先日それが324作品に達した。
最大手の小説投稿サイト「小説家になろう」でシステマが登場するのは確認できた範囲で158作品である。
これらの作品について気になったことを書いておく。もちろん必ずしも面白さとリアルさは関係あるわけではない。
小説に出てくる姿と現実のギャップの確認である。

  • 誤解1:システマ素手専門の武術だ
    • 複数のネット小説でシステマ徒手格闘しかない・武器を使わない武術として扱われている。
    • 小説内でそのように説明されていて、システマ使いが他に武器を使った武術を学んでいたり、武器戦闘を必要とする主人公の修行候補から外されたりする。
    • 小説で武器を使うにしてもナイフくらいであり、システマでどのような武器が使えるかはほとんど知られていないようだ。
    • YouTubeなどで見られるシステマの動画において素手で武器に対処する内容はよくあるが、武器を使う動画は少ないというのも一因かもしれない。
  • 誤解2:システマは多人数戦闘に特化している世界唯一の武術である
    • ステマは確かに多人数での戦闘を想定した技術があり、多人数での練習も豊富にあるが、他の武術や軍隊格闘技でもその種の技術はある。
    • そして特化はしていない。他の格闘技よりも大人数での練習がある点が最大の違い。
    • またシステマの多人数戦闘の要は歩法にあるという扱いを複数の小説で見るが、これも誤解というか無理のある理解である。
  • 誤解3:システマは軍でしか学べない
    • 一部の作品に登場する説明。しかし民間人が学んでいる話も多いので、こういうイメージが全般に使われているわけではない。
    • 現実のシステマは世界に広まった現在、民間人の練習者のほうが多い。
    • 最もこの辺は創作の設定上そういう扱いにしたほうが便利だし現実の普及状況に合わせる必要はないと思う。
    • ネット小説のみならず海外小説に登場するシステマでもこれと同じような扱いはある。
    • 一方、現実で民間人が学べない軍隊格闘技についてネット小説では民間人が学んでいたりする。創作の都合なのか知識の問題なのか。
      • ネット小説固有の軍隊格闘技の扱いがあって、それが現実とも他の創作とも違っている感じ。
  • 誤解4:他の格闘技・武道と練習スタイルが同じ
    • 練習環境や練習方法について他の格闘技と区別がついていない小説がいくつもある。
    • 例えばシステマの道場の作りがボクシングジムと全く同じ小説を読んだことがある。
    • これは誤解というより「知らないことを書こうとして知っている別物を代替にした」ということだと思う。
    • こういう問題は他の格闘技の登場作品でもあって「指導者の呼び方」「段位や免許などの仕組み」「練習方法」「練習場所や練習器具」「試合や大会、ルールの内容」といったことで他の格闘技の用語や知識を無理やり使ってしまう作者がいる。だが、それをやるとちぐはぐになる。うまい作者は知らないことはそもそも書かないか調べるかしている。
  • 誤解5:システマには独特の構えがある
    • 複数の作品でシステマの構えが登場している。目撃者がシステマ使いだと同定する根拠になることもある。
    • しかし実際はヴラディミア・ヴァシリエフ師が「システマにおいて構えは一切ありません」と書いているように、システマには見た目でそれとわかる固定的な構えは存在しない。
    • ステマに存在しない構えが出てくるのは、「システマの外見上の特徴」「戦闘開始時に何をするか」といった知識の問題だろう。
    • 誤解4と同じで他の格闘技の認識をシステマにそのまま流用している問題と言っていいかもしれない。
  • まとめ
    • 上に挙げた誤解は、創作上の都合よりは広まっているイメージや知識によるところが大きいのではないか。
    • ステマはネット小説に登場する数こそ増えたものの、まだまだ実態は知られていないと思う。